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INFORMATIONDec. 10, 2025COP30報告会イベントレポート

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開催概要

2025年11月27日(木)、三菱総合研究所本社ビルにて「COP30報告会」を開催した。 
本イベントでは、ブラジル・ベレンで開催された「COP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)」における合意事項・討議事項に関する解説と、実際に現地に赴いた社員による座談会を実施した。 
当日は、対面で38名、オンラインで約60名が参加した。 

(三菱総合研究所 GX本部エネルギー・サステナビリティ フェロー 山口 建一郎)

以下で各プログラムの内容を紹介する。 

COP30全体解説

三菱総合研究所 GX本部 海外事業推進グループ フェロー 山口 建一郎 

三菱総研 山口より、CDRに関連するCOP30の全体解説が行われた。 

COP30の背景

COP30は、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の地域持ち回り開催の一環として、ブラジル北部パラ州の都市ベレンで開催された。

今回の会議は、京都議定書やパリ協定といった新たな合意を生み出す場というより、これまで構築された枠組みを実現可能な段階へと進展させることに重点を置いたものと言える。一方で、地政学的背景は厳しく、米国の気候変動対策への関与の低下(DOE予算の大幅削減)や、ウクライナ危機によるエネルギー価格高騰等の要因から再エネ推進の勢いも鈍化していた。さらに、欧州のCBAM(炭素国境調整措置)に対する途上国の反発も強く、「共通だが差異ある責任」をめぐる対立が続く状態での開催となった。

開催国ブラジルのルラ大統領は、会議全体を通じて「Multilateralism(多国間主義), People(人々), Implementation(実施)」をキーワードに掲げ、多国間の協調と実効性を強調した。特に、会議初日に発表された「Presidency Letter(議長声明)」では、精神的な指針として各国間の協力と行動の重要性が改めて訴求された。

主たる議題と成果

COP30では「Presidency Consultation」により、議題ごとの調整が効果的に行われ、事前に懸念されていたアジェンダの設定を巡る深刻な対立(アジェンダファイト)がなく、交渉の滑り出しは円滑であった。また、COP30の成果は、象徴的な「Mutirão Decision」(ムチラオ、ポルトガル語で「協調、相互補助」)に集約される。

具体的には以下の点が挙げられる。

主要な議題は以下の通りである。

第9条(資金支援)

先進国から途上国への資金移転に関する議論が継続され、特に第9条1項に関する2年間の作業プログラムに注目が集まった。検討を進めるための合意形成の場として位置づけられ、先進国から途上国に限られない「第9条の文脈において」と但し書きがついたが作業プログラム策定が合意された。

貿易措置(CBAMなど)

CBAMをはじめとする貿易関連措置に反発する途上国の声を受け、議論の継続を目的とした専門の場を新設することで合意が進んだ。特に途上国にとって、継続的な議論の機会が確保されたことは重要な成果である。

NDC(国別削減目標)の達成度

毎年の検討を求める国と、そのような取組は5年おきに行う「グローバルストックテイク」の合意に反するとした国との間で紛糾し、また化石燃料に関する目標の有無等も課題となったが、最終的にはこれらは削除され、今世紀半ばのグローバルなネットゼロと整合し、1.5℃を射程に置くことを奨励するものとなった。

Global Goal on Adaptation(適応領域のグローバル目標)

適応指標の策定に向けた2年間の計画が最終段階を迎え、その合意が発表された。ただし実質2年の延長ともとれる。

ジェンダーアクションプラン

各国の価値観の違いを反映しつつも、一部実行可能な形での採択が行われ、方向性が示された。ただし、本プランに関する拘束力は限定的なものにとどまった。

パリ協定第6条(市場メカニズム)

京都議定書で用いられてきたクリーン開発メカニズム(CDM)を第6条4項に統合することで、既存の市場メカニズムの維持しながら調整を進めることが合意された。

総じて、今回の会議は「新たな合意」ではなく、「既存の枠組みの実装と調整」に主軸を置く姿勢が目立った。

COP30参会者による座談会(現地の体験、見どころ、雰囲気)

モデレーター:

三菱総合研究所 GX本部 海外事業推進グループ 主席研究員 新地 菊子

パネリスト:

三菱総合研究所 GX本部 海外事業推進グループ 主任研究員 榊原 恵

三菱総合研究所 GX本部 海外事業推進グループ 研究員 柳谷 奏明

(左より三菱総合研究所 GX本部 新地 菊子、柳谷 奏明、榊原 恵)

会場限定で開催されたCOP30よもやま話では、現地に赴いた研究員が公式議事録では語られない体験や出来事の解説を行い、交渉の裏側や会場の雰囲気をざっくばらんに語り、参加者にリアルな現場感を伝えた。

本セッションはリアル参加者限定のセッションであったため、以下に一部ポイントのみ掲載する。

なぜ交渉は長引くのか?

  • 国連交渉は多数決ではなく全会一致が原則であるため、合意形成に時間がかかる。
  • 各国の利害調整が複雑で、非公式討議での調整が不可欠である。

交渉は誰が仕切り、誰が議論するのか?

  • アジェンダトピック毎に会議体が設定され、議長やファシリテーターが進行する。進行役のキャラクターが議論の雰囲気に影響する。
  • 議論は各国交渉官によって行われるが、複数のアジェンダトピックを担当する交渉官は長時間の会議となり大変である。

COP30で特徴的だったこと

  • 今回のCOPはトップダウンで早期採択を目指す動きが強かった。
  • もめた論点は少人数でテキストまで詰め、大臣級会合で決着する場面が多かった。

ジェンダー議論の背景と目標

  • Gender Action Plan採択の背景として、気候変動が女性に特有の負担を増やす現実(水汲みの距離増加、暴力リスク)がある。
  • 日本への直接的影響は限定的だが、国際的なジェンダーバランスの議論は重要である。また、COPにおける女性参加率は約40%まで増加しており、参加者数にも反映されていることがわかる。


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