2026年2月27日に、ICFロボット研究会の第4回イベントとして「SF思考×社会的インパクト思考で具体化する、先端ロボットの社会実装の姿」をテーマにしたイベントを開催しました。
今回は、川崎重工様の共創拠点「CO-CREATION PARK – KAWARUBA(以降、KAWARUBA)」を会場に、企業・自治体・研究機関など多様なバックグラウンドを持つ参加者が集まりました。
ロボット技術は、少子高齢化や労働力不足といった社会課題への対応策として期待される一方、その社会実装の姿はまだ十分に描ききれていません。そこで本イベントでは、トークンエクスプレス様のご協力のもと、SF思考に社会的インパクト思考を組み合わせ、2040年の社会を想定しながらロボットがもたらす新しいビジネスや社会の姿を具体的に描くことを目的に議論を行いました。
当日は、KAWARUBA見学、情報提供、ワークショップの3つのプログラムを通じて、ロボット技術の社会実装に向けた可能性について参加者同士で議論を深めました。

イベント内容
1.KAWARUBA見学
まず、川崎重工様の共創拠点KAWARUBAの見学を行いました。KAWARUBAは、HANEDA INNOVATION CITY内に設置された共創拠点であり、企業や自治体、研究機関など多様な主体が集まり、社会課題の解決に向けた新たな価値創造や社会実装を目指す場として運営されています。
施設内では、川崎重工様が取り組むロボットや水素利用などの技術に関する展示や、ワークショップやイベントを行うための共創スペースが整備されています。展示エリアにはヒューマノイドロボット「Friends」や4脚型オフロードパーソナルモビリティ「CORLEO」等も展示されており、参加者は次世代ロボットの技術動向を間近で見る機会となりました。
見学を通じて、企業単独の研究開発にとどまらず、多様なパートナーとの共創を通じて新しいソリューションを社会実装していく取り組みについて理解を深めました。
2.情報提供(ICF推進オフィスより)
続いて、三菱総合研究所ICF推進オフィスより「次世代ロボットを支えるディープテック」をテーマに情報提供が行われました。本発表では、後続のワークショップに向けたインプットとして、未来社会で活躍するロボットを支える技術動向が紹介されました。
特に、ロボットの知能化や実環境への適応を進めるスマートロボティクスと、人の感覚を再現する触覚・ハプティクス技術等が取り上げられました。
スマートロボティクス分野では、ロボット基盤モデルや模倣学習といった技術により、ロボットの汎用性や適応力を高める研究が進められています。また、触覚・ハプティクス分野では、VR触覚グローブや空気圧人工筋など、人の触覚や力覚を再現する技術が紹介されました。これらは遠隔操作や技能訓練、医療リハビリなど幅広い分野での応用が期待されています。
こうした技術動向を踏まえ、続くワークショップでは2040年の社会を想定し、ロボットがどのように社会に実装されていくのかについて議論を深めていきました。

3.ワークショップ
ワークショップでは参加者を4チームに分け、「2040年の社会においてロボットがどのように活用されているか」をテーマに議論を行いました。議論は以下の4つの観点をもとに進められました。
- 新しい言葉(新ビジネス)
- 未来社会のキャラクター
- 目指したい未来社会とそのKGI
- 未来社会を実現するための働きかけ
新しい言葉(未来のビジネス)
まず、未来社会において当たり前になっている言葉を想像し、新しいビジネスや生活の姿を表す概念を考えました。
医療分野では、ロボットが多くの医療行為を担う社会を前提に、効率化された医療の中でも人と人とのケアやコミュニケーションを重視する医療のあり方や、拡張現実技術などを活用して患者一人ひとりに寄り添った支援を行う新しい看護の形などを表す言葉が生み出されました。
生活分野では、人の感情や状況を読み取りながら柔軟に支援を行うロボットの存在や、自然環境の中で働くことを取り入れた新しい働き方など、ロボットが人のウェルビーイングや生活体験の質を高める未来の生活像を表す言葉が考案されました。
また産業分野では、AIが人に代わって生産活動を担う仕組みや、大規模な建築物を原子力エネルギーや3Dプリンタによって生産するような技術など、労働力不足への対応や産業構造の変化を象徴するような新しい言葉が提案されました。
未来社会のキャラクター
次に、未来社会を生きる人物像を設定し、その人物の視点から社会の変化を語ることで、ロボット技術が社会に浸透した背景を具体的に考えました。
AIやロボットに生活を支えられる会社員、AIを活用して農業を行う生活者、AIに依存する社会に不安を感じる高齢者など、さまざまなキャラクターが設定されました。
これらの議論から、ロボットやAIが生活に深く入り込んだ社会では利便性が高まる一方で、情報過多やAI依存といった新たな社会課題が生まれる可能性も示されました。
目指したい未来社会とそのKGI
ワークショップの後半では、上記のキャラクターが暮らし、新しいビジネスが社会に普及した未来において、実現したい社会像やその達成度を測る指標(KGI)について検討しました。
例えば医療分野では、ロボットやデータの活用により医療従事者の負担を軽減し、医療従事者の労働時間を20%削減するといった目標が提示されました。また生活分野では、ロボット技術の活用によってメンタル不調による労働損失を削減し、メンタル不調による経済損失をGDP比1.1%から0.5%へ削減するといった具体的な目標も議論されました。
未来社会を実現するための働きかけ
最後に、こうした未来社会を実現するために、参加者自身やそれぞれの組織がどのような取り組みを行うべきかについて議論しました。
議論では、ロボット技術の開発だけでなく、企業、自治体、研究機関など多様なステークホルダーが連携しながら社会実装を進めていく必要性が指摘されました。
4.本イベントでの気づき
今回のワークショップでは、医療、生活、産業などさまざまな分野をテーマに、ロボットがもたらす未来のビジネスや社会の姿について多角的な議論が行われました。各チームの議論からは、ロボットが人手不足を補うだけでなく、人の生活の質やウェルビーイングを高める存在として社会に浸透していく可能性が見えてきました。
各チームの議論にはいくつかの共通点が見られました。共通していたのは、ロボットを単なる省人化の手段として捉えるのではなく、医療や生活、産業など幅広い分野で新しいサービスや価値を生み出す存在として捉えていた点です。また、多くのチームで、人手不足や労働環境の改善、生活の質の向上といった社会課題への対応が重要なテーマとして挙げられました。
さらに印象的だったのは、人の状況や感情を察しながら支援するような「お察し型」のロボット像が多くの議論で見られたことです。医療や生活支援の場面では、単に作業を代替するだけでなく、人の状態や意図を理解しながら柔軟に対応するロボットが求められていることが示唆されました。
一方で、2040年の未来社会を想定して議論を行ったものの、具体的なサービスや社会像を描く過程では、議論の多くが2030年前後に実現可能なアイデアに自然と収束していく傾向も見られました。これは、参加者が技術的・社会的な実現可能性を意識して議論を進めた結果であり、ロボット技術の社会実装や事業化を考える上では、現実的な市場や収益性と親和性の高い方向性であったとも言えます。
ただしあくまでワークショップの進行の中で自然とそうなったものであり、SF思考そのものが短期的な発想に限られるものではありません。本来、SF思考はより長期スパンで実現したい未来社会を描き、その社会から現在に向けて事業機会を検討するための有効な手法でもあります。
今後の活動では、こうした長期的な未来像の検討と、社会実装や事業化につながる現実的な視点の双方を行き来しながら、ロボットの社会実装に向けた議論を深めていきたいと考えています。
プログラム
| 13:00 | 集合 |
| 13:00 – 14:00 | はじめの挨拶・KAWARUBA見学 |
| 14:00 – 14:30 | 情報提供 |
| 14:30 – 17:45 | ワークショップ |
| 17:45 – 18:00 | 発表会・終わりの挨拶 |
| 18:00 – 20:00 | 懇親会 |
| 20:00 | 解散 |
本イベントに関するお問い合わせ
三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ推進オフィス 担当:山田・片岡・水嶋
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp





