Panel Discussion
スタートアップ・エコシステムのキー・プレイヤーが語る
社会課題解決型ビジネスの実現とスタートアップの役割
石井芳明 氏
経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室長
各務茂夫 氏
東京大学 大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 教授
高塚清佳 氏
新生企業投資株式会社 インパクト投資チーム シニアディレクター
竹村由賀子 氏
トモイク株式会社 代表取締役
名倉勝 氏
CIC Tokyo ゼネラル・マネージャー
モデレーター:三菱総合研究所 未来共創本部 本部長 須﨑彩斗
自己紹介&現在の活動
名倉: CIC Tokyoという日本最大級のイノベーションセンターを運営しています。スタートアップを中心に300社以上が集えるスペースを提供し、さまざまなコミュニティを作って、スタートアップの成長環境を整えています。
竹村:トモイクの竹村と申します。BAP2020年にモシーモ社の新規事業部として応募し、オーディエンス賞を受賞しました。その後、モシーモ社の新規事業部をスピンアウトする形で、トモイク株式会社を設立。現在、スタートアップならではのスピード感で、邁進しているところです。
石井:経済産業省で、スタートアップの支援をしていまです。現在、スタートアップ支援は政策の柱になっており、昨年はスタートアップ5カ年計画を策定しました。人材、資金、ネットワーク、オープン・イノベーションを通じて、スタートアップを応援します。昨年末の補正予算では、前代未聞の1兆円規模の支援パッケージを作り、目下、支援を強化しているところです。
高塚:2004年から投資分野に係っており、2017年、所属する銀行グループで、インパクト投資チームとインパクト投資ファンドを立ち上げました。以来、一貫してインパクト投資ファンドを運営。現在2本のインパクト投資ファンドを運営中です。今年後半から来年ぐらいに3号ファンドを設立すべく、継続して取り組んでおります。
各務:大学の中でアントレプレナーシップ教育を進めております。今後ますます、国の施策と呼応するような形で、大学も変わっていかなければなりません。大学の研究成果や学生の持つアイデアを社会課題の解決に繋げられないか、と考えております。
#1どのような課題を抱えているか
須﨑:普段のご活動の中で、どのようなことに課題に感じていますか?
竹村:私たちは、産後うつや産後うつ手前のお母さんをサポートしています。資金調達が必要なのですが、「投資合理性がない」と判断されることが非常に多い。これが、大きな課題です。
名倉:社会課題解決のスタートアップは、成功例があまり知られていません。情報の流通ができていないことに、課題を感じています。投資家にせよ、政府にせよ、エコシステムを作り、さまざまな情報を出回らせることで、社会解決型のスタートアップが活動しやすい社会ができるのではないでしょうか。
高塚:「投資合理性」の話が出ましたが、投資をするとき、私たちがインパクト面から見ているポイントが3つあります。その事業で課題解決に取り組もうとするインテンション、取り組む課題の重要性、事業の打ち手としての有効性です。
これらは、事業の成長性の話でもあります。マーケットがどこか、需要が確かにあるか、それに対して自分たちのビジネスモデルがどれぐらい効くのか。社会課題解決と経済性事業成長を両面で捉えて説明できれば、VC目線のインパクト投資家を引き付けやすくなります。
石井:行政側も、高塚さんがおっしゃった基準と同じような形です。国や自治体においては、社会課題の定義が難しい。ペインが明確に出ていれば、「スタートアップにお願いしたい」となりますが、解像度が低いとうまく連携できません。このとき、名倉さんのような、間に入って調整してくれるプレイヤーがとても重要です。
須﨑:各務先生にお聞きしたいのですが。社会課題に関する理解や整理の仕方を、若い方にどう教えているのですか?
各務:講義という意味での教育というよりも、学生が、体験したり、肌で感じたりする機会をどのぐらい持てるようにするかでしょうね。キーノートで出雲社長の話をしましたが、バングラデシュで実際見聞きしたものが、影響を与えています。宇井さんも、実際に経験したオペレーション、失敗、そしてPDCAを回したことが、結果として資金調達においてプラスになりました。
須﨑:竹村さんは、ご自身の経験や課題をどのようにビジネスにしていくのか、何から学びましたか?
竹村:自身が産後うつ状態に陥った経験が大きいです。社会の中でお母さんが感じることを、私自身も感じたとことが、起点になっていると思います。
今後の抱負、展望
須﨑:今後の抱負や将来の展望をおきかせください。
高塚:スタートアップの成長ステージには、シード⇒アーリー⇒ミドル⇒レイターとある中で、特にミドルからレイターのステージに差し掛かるスタートアップがIPOをどのように描くかは重要です。IPOの瞬間の話ではなく、むしろ上場後も続いていく企業の在り方として、社会課題解決をしながら事業成長し続ける。この描き方が、私たちにとって一番のチャレンジです。
投資先様を通じ、インパクトある企業が成長していく事例をたくさんお出しできるよう、努力してまいります。
名倉:そういった成功事例を作っていくことは、とても重要です。その成功事例を作るために何をするのか。スタートアップって、しんどいですよね。人もない、お金もない、営業ツールもない。しかも今、日本がスタートアップにフレンドリーな環境かというと、決してそうではありません。
中間に入る我々のようなところが、どれだけスタートアップに機会を持っていけるのか。良質なコミュニティを作り、場を用意することで、投資家とスタートアップの接点を繰り返し持てるようにしていきたいと考えています。
各務:スタートアップにとって重要なのは、ファーストカスタマーをどう掴むか。できればファーストカスタマーに近い役割を、大企業や行政などが担い、社会実装の起点をつくれると良いですね。1回実際のカスタマーに入り込むという機会をいかにして作るか、ファーストカスタマーとして社会実装をどうテストするかが、大事なところです。
石井:ファーストカスタマーや公共調達については、スタートアップの技術やサービスが見えづらいという問題があります。それを解決するために、実は今、スタートアップのカタログ100選を作っているところです。カタログ作りから始めて、そのピッチイベントを開催し、繋いでいこうと思っています。
あとは、B Corp(※)取得などのブランディング、人材支援、資金供給の強化などにも注力していきます。引き続き、民間の皆さんと連携しながら、応援していきたいと思っております。
竹村:スタートアップは、日本のマーケットでなかなか数字を取れないという問題があります。海外のスタートアップや、海外のマーケットをぜひ紹介していただきたいです。
あとは、人材の部分。優秀な人材を投与しなければ、スケールアップできません。今、大企業の皆様と共創していますが、本当は、もう少し入り込んでいただきたい。例えば出向のような形で、ぐっと踏み込んでいただきたいと思っています。
須﨑:パネリストの皆様、本日は貴重なお話をありがとうございました。
※「B Corp」…「B Corporation」の略。社会課題や環境問題に関わる事業を行っている企業に与えられる国際的な民間認証制度。
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Closing
株式会社三菱総合研究所 代表取締役社長 籔田健二
当社として従来から社会課題の解決に取り組んでまいりましたが、提言してきたことを、社会に実装していく必要があります。知恵を出し、汗を流し、お金を出し、事業家の皆さんと共創の場を作り、社会的インパクトを生み出すことが、当社の役割だと実感しました。今後の事業やご支援、資金提供などに、少しでもヒントとなる情報を提供できたのであれば幸いです。
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本件に関するお問い合わせ
(株)三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ MRI DEMO DAY 2023事務局 担当:八巻・加藤
E-mail:mri_demoday2023@ml.mri.co.jp