株式会社三菱総合研究所

Deep TechJuly 15, 2025ICFディープテックコラム~柔らかくしなやかなロボット~

未来の食はいったいどうなっているのでしょう?

体調や気分に応じて、料理が私たちの食卓に都度届く未来があったら面白そうです。例えば、仕事で疲れている日には、疲労回復にぴったりなメニューが、しかも自宅に届いた瞬間がいちばん美味しいタイミングで提供される。そんな未来が実現すれば、仕事をもう少し頑張ってみようと思うかもしれません(笑)。「食事は冷蔵庫にあるアリモノで作るもの」とつい考えてしまう日常からは、まったく違った世界になりますね。

この「いちばん美味しいタイミングで提供される」未来の食を実現するカギは、作物の収穫、選別、調理・加工、そして配送といった、食のサプライチェーンです。サプライチェーンのなかでも「収穫」は作物の成長や天候の変化で日々変化する環境下で自動化が難しく、今でも人手に頼ることが多いため、とくに注目したいポイントです。

未来の農場では、センサーが果物や野菜の成長を見極め、収穫のタイミングを自動で判断します。すると、取得した情報をもとにしっかりと熟すなど収穫対象となった作物だけを摘み取っていきます。ここで重要な役割を果たすのが、柔らかい素材で構成される「ソフトロボット」です。ソフトロボットとは、従来の金属製で硬いロボットとは異なり、ゴムやシリコンなどの柔らかい素材で作られたロボットのことを指します。例えば、固い金属で構成されたロボットだと、熟して柔らかい果物を傷つけてしまいます。しかし人の手のように柔らかく、しなやかな動きができるロボットアームであれば、果物を傷つけずに収穫可能です。熟した桃やいちごをそっと包み込むようにつかんで、枝からもぎ取る——そんな繊細な作業も、ロボットがこなせるようになります。

イチゴを収穫する柔らかいロボットイメージ(Adobe Fireflyで作成)
※筆者は、ゴムのようにさらに柔らかい素材で構成されたロボットをイメージしています

ここまで、未来の農場を想定してきました。現在の食のサプライチェーンでも、ソフトロボットは欠かせない存在になります。たとえば食品工場向けに、農作物を傷つけずに持ち上げて移動させるために、ソフトロボットの技術を活かした把持装置の開発がすでに行われています1。今後は、こうした技術が、収穫を含んだサプライチェーン全体に広がっていくことで、「いちばん美味しいタイミングで提供される食」の世界が見えてくるのです2

先進技術を賢く活用することで、私たちの生活はますます快適で効率的になる。これは間違いないです。ICFでは今年度、技術起点で社会課題解決を目指す取り組みを始めました。技術起点で重要なことは、「その技術でどのような未来社会を実現したいか」を考えることです。私たちと未来社会を創造しませんか?

ロボット研究会

今年度ICFでは「ロボット研究会」を立ち上げました。SF思考で未来社会と、その社会で必要とされるロボットの姿を創造することを目指します。第2回オンラインイベントを7/30-31に渡り開催予定です。会員の皆さまは奮ってご参加ください。

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著者紹介

山田 賢杜(やまだ まさと)
先進ロボティクスやAI領域を中心に、政策提言や企業・大学のオープンイノベーション支援に従事。
最近の趣味はランニング。大の甘党。


1 YouTube ブリヂストンチャンネル「ブリヂストン ソフトロボットハンド ピースピッキング」 https://www.youtube.com/watch?v=SsptcHlcV0k
2 「未来の食」として3Dフードプリンターを想像する方も多いかと思いますが、別の機会で触れられればと思います

本コラムに関するお問い合わせ

三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ推進オフィス 担当:山田
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp

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