株式会社三菱総合研究所

Deep TechJune 11, 2025ICFディープテックコラム~触れる技術で進化するロボット~

「未来の建物」はいったいどうなっているのでしょう?

私たちは「建物は動かない」と思っていますが、環境や利用シーンに応じて変形する建物があると面白そうです。例えば、天候に合わせて屋根や外壁が動くと、自然光を最大限に利用することが可能になります。太陽が強いときには日差しを遮り、逆に雨や曇りの日は日光を取り入れることで、快適性を高めます。建物内部では、空間のモジュール化が進み、内部の機能を柔軟に配置変更できるようになります。人が風呂やトイレに移動するのではなく、なんと風呂やトイレが、人がいるところまで移動してくる未来があるかもしれません1

この「未来の建物」はどのように管理するのでしょうか。建物の管理と一言で表しても、日常的な清掃や修繕、設備の点検。公共の建物であれば電気設備の運転管理、警備等、作業は多岐に渡ります。なかでも、定型的で頻度が高く、精神・肉体的に負担が高い作業として「清掃」がありますよね。

風呂のぬめりを触って確認するロボットのイメージ(Adobe Fireflyで作成)

「未来の建物」の清掃は、カメラで汚れを検知した外壁や風呂が、建物内のある空間に移動して、格納され、丸ごと洗浄液につけて汚れを落すことができるようになるでしょう。外壁や風呂などを、人手を介さず自動で丸ごと洗うことができるようになれば非常に便利です。
さらに、ぬめりやこびりついた汚れが残ってしまうという心配もいりません。触覚技術を備えたロボットが重要な役割を果たします。ロボットに搭載の触覚センサーで風呂のぬめりを認識し、その部分を重点的にロボットが清掃することで、常に快適な環境が保たれます。高い外壁を清掃する際も、ロボットに任せることができます。

ここまで未来の建物を想定してきました。私たちが今、生活している建物でも、触覚技術を搭載したロボットは欠かせない存在になります。建物の外壁や風呂の清掃は、現在でも多くの人にとって億劫な作業ですよね。ロボットが、物体に直接接触する感覚や力加減を察知することで、正確な清掃を行うことができるようになるでしょう2。清掃の品質がさらに上がると、今は「結局、最後は人間がやらないといけないんでしょ」と思われることも、完全にロボットに任せることができるようになります。

先進技術を賢く活用することで、私たちの生活はますます快適で効率的になる。これは間違いないです。ICFでは今年度、技術起点で社会課題解決を目指す取り組みを始めました。技術起点で重要なことは、「その技術でどのような未来社会を実現したいか」を考えることです。私たちと未来社会を創造しませんか?

ロボット研究会

今年度ICFでは「ロボット研究会」を立ち上げました。SF思考で未来社会と、その社会で必要とされるロボットの姿を創造することを目指します。初回オンラインイベントを6/25に開催予定ですので、会員の皆さまは奮ってご参加ください。

著者紹介

山田 賢杜(やまだ まさと)
先進ロボティクスやAI領域を中心に、政策提言や企業・大学のオープンイノベーション支援に従事。
最近の趣味はランニング。大の甘党。


1 例えば、日本経済新聞「走るトイレ、TOTOがCESで公開 目指すは「TaaS」」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54202620Z00C20A1000000/?msockid=2292376af2046a84241222a3f3ee6b0d 2025/6/4閲覧
2 例えば、モーションリブ株式会社は、溶解炉内のこびりついた汚れを触覚で検知し、伝送することが可能な技術「協働ロボット用感触伝送遠隔操作ユニット「URH」」を開発している
https://www.motionlib.com/movie/category/remote/ 2025/6/4閲覧

本コラムに関するお問い合わせ

三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ推進オフィス 担当:山田
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp

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