「ICF Business Acceleration Program2023」(以下、本プログラム)の最終審査会・受賞者ピッチイベント「ICF Startup Showcase 2023」を12月8日(金)、BASE Q(東京ミッドタウン日比谷)にて開催し、最優秀賞2賞(ICF賞・三菱総研賞)、オーディエンス賞、優秀賞を選出いたしました。
9回目を迎えた本プログラムへの応募総数は、過去最大の208件。海外からの応募も50件に上り、徐々にグローバル色が強まりました。最終審査会に臨んだファイナリスト7チームは特別賞受賞の8チームとあわせ、「社会課題解決に向け共に挑んでくれる有望な先」であると、ICF事務局長の水田裕二は高く評価。また会場並びにオンライン視聴者に向けては、「是非みなさまも共創可能性という目線で各チーム・各ピッチをご覧いただきたい」と呼びかけました。
今回、コロナ禍後初めて社外の大会場で開催し、来場者・視聴者は、会場・オンラインを合わせて200名超。審査対象のファイナリスト7チームのピッチに加えて、特別賞受賞者8チームのピッチ、本プログラム開催に多大なご支援をいただきましたKOTRA様によるプレゼンテーションを実施し、登壇者のみなさまのブースを展示しました。イベント後の交流会も、例年以上に多くのみなさまにご参加いただき、社会課題を解決するスタートアップへの興味関心の高さ、そしてICF活動への注目度も高まっていることを実感できるイベントとなりました。
審査員(順不同)
最優秀賞の審査員は以下の通りです。
最優秀賞(ICF賞)
小宮山 宏 | 株式会社三菱総合研究所 理事長 |
リチャード・ダッシャー氏 | スタンフォード大学 アジア・米国技術経営研究センター 所長 |
椙山 泰生氏 | 京都大学 名誉教授(椙山女学園大学 現代マネジメント学部教授) |
校條 浩氏 | NSV Wolf Capital マネージング・パートナー |
高塚 清佳氏 | 新生インパクト投資株式会社 代表取締役 |
須崎 彩斗 | 株式会社三菱総合研究所 事業基盤部門統括室長 |
最優秀賞(三菱総研賞)
籔田 健二 | 株式会社三菱総合研究所 代表取締役社長 |
水原 秀元 | 株式会社三菱総合研究所 代表取締役副社長/VCP総括 |
高橋 朋幸 | 株式会社三菱総合研究所 執行役員/事業基盤部門長 |
木村 孝 | 株式会社三菱総合研究所 コーポレートベンチャリング本部長 |
榎本 亮 | 株式会社三菱総合研究所 VCPマネージャー |
【最優秀賞(ICF賞)】
提案名:商品・Webサービスの自動カーボンニュートラル化
受賞理由:温暖化は地球の大きな問題。そこから派生するさまざまな課題を行動変容で解決していくことは非常に重要。CO2排出量自動算定とカーボンオフセットができるAPIにより、既にさまざまなエコシステムを作り始めている
プレゼンター:Sustineri株式会社 岩﨑佐代子氏
企業や消費者がモノやコトを購入するときに、環境に優しい意思決定をすることができるようにしたい、そのためには、商品、サービスのCO2排出量を正しく算定すること、そして取引の場で可視化することが重要です。当社が提供する「Susport」は、算定・可視化とともに、カーボンオフセットのプロジェクトをAPIでつなぐことのできる日本で唯一のサービスです。
現在は、CO2排出量の算定・可視化のニーズの高い建設業界向けに、「Susport建設」を提供しています。建築分野は排出量可視化のニーズが高いものの、その算定が難しく、工数が非常にかかります。これに対し「Susport建設」は自然言語処理やAIによる学習機能などを活用し算定精度を高め、CO2排出量を数クリックで手軽に算出できるようにしました。一方、「Susport」は他業界に広く対応するWebサービスで、あらゆる商品、サービスへの適用が可能です。国内外の約40件のカーボンクレジットを保有しており、CO2排出量算定とカーボンオフセットによるカーボンニュートラル化を一気通貫で実現します。「Susport」はこれらの機能をAPIで提供することができます。
すでに、交通業界・旅行業界では提供実績があり、今後は他にもさまざまな領域に展開可能だと考えています。日本は未だ商品・サービス単位でのCO2排出量算定が進んでいない領域も多く、非常に大きなインパクトを創出できると思います。
【最優秀賞(三菱総研賞)】
提案名:行動変容を促す実感性の高いヘルスケアサービスの普及
受賞理由:健康経営は大きな社会課題。体内ミネラル量を数本の毛髪で手軽に計測するサービスにより、個人の健康データを集め、予防のための行動変容につなげる事業構想は、当社の社会実装パートナーとして期待できる
プレゼンター:株式会社ノビアス 井上史之氏
当社は毛髪からミネラル量を検出する技術を持つスタートアップです。体内ミネラル量を検査することで、骨粗鬆症や糖尿病、心臓疾患などの生活習慣病の予測や、未病の状態検出が可能となります。当社の毛髪検査技術は、従来よりも少ない検体量で検査ができ、費用も安く、しかも短時間で結果を出せることが大きな特徴です。毛髪から得られるデータは日内変動が少なく、経時変化の測定に向いています。簡単に入手できる検体を経時的に集め、他のヘルスケア情報と統合することで、非常にユニークなヘルスケアデータを構築し、ユーザーの「行動変容」を促すことを目指します。現在、サプリメーカーや美容サロンなどを対象に、OEM提供するサービス「MINE」をリリース済です。今後は、より気軽に検査いただけるように、ドラッグストアなどに設置可能な小型検査装置の開発も検討しています。
数十兆円とされる国内ヘルスケア市場のうち、当社のターゲットとなるのは300億円程度の規模と推計。ニーズの高い美容の市場からアプローチし、産後ケアなどのフェムテック、生活習慣病へと領域を広げていきます。検査データを踏まえ、不足するミネラル量の補給の仕組みを自然食品メーカー等と共創し、疾患予防につなげることも視野に入れています。また、データが蓄積され、生活習慣病や認知症などのバイオマーカーを把握できるようになれば、その検診サービスの立ち上げも視野に入ります。BAPを通じて、健康経営に意識の高い企業さまと実証実験や商品開発に取り組みたいと考えています。
【オーディエンス賞】
提案名:利用者の移動データに基づく最適な公共交通の設計とAIオンデマンド交通運行システムの提供
プレゼンター:SWAT Mobility Japan株式会社 末廣将志氏
SWAT Mobilityは世界一のルーティング・アルゴリズムを持つシンガポール発のスタートアップ企業です。人口減少に伴う路線バスの赤字増大や物流の2024年問題などの交通と物流の課題を解決し、最少の車両、最少の移動距離でより多くの人・モノを移動させ、移動の需要と供給が最適化された社会の実現を目指しています。
当社のアルゴリズムは、国際的なベンチマーク機関Li & Lim benchmarkで世界一を記録しています。また、カスタマイズ可能な200以上のパラメータを持っている点も特徴です。これをもとにAIオンデマンド交通運行システム、配送ルート最適化システム、交通分析・導入シミュレーションの3つのサービスを提供しています。日本では、オンデマンド交通システムを2020年から現在までに50カ所以上で導入、150台以上が稼働しています。配送ルート最適化システムを活用し、大手宅配便事業者の配送や、自治体のゴミ収集ルート最適化などの実証実験を行っています。交通分析、人流分析、シミュレーション、サービス運営などを一社で提供できるのも、当社の強みです。また、交通事業者だけでなく、移動の先にある飲食店や観光事業者等と連携したサービスの提供も視野に入れています。一部地域で観光アプリとの連携事例もありますが、今後、三菱総研との連携を図り、その事業構想力やコネクションで、さらに強いサービスを構築したいと考えています。
【優秀賞】※発表順
提案名:激変する環境に対応する未来の植物をスピーディな種苗開発で実現
プレゼンター:グランドグリーン株式会社 諏佐啓太氏
肥料原料の枯渇、異常気象や気候変動によって作物の生産現場、すなわち農業に大きな影響が生じています。また、健康意識や環境意識の高まりに伴って新たな作物も求められるようになりました。当社はこれらの課題に対し、独自の接木技術、育種技術、そしてゲノム編集技術によって、通常10年かかる品種開発を3年に短縮することで解決に挑みます。
ゲノム編集技術はその中心にある技術です。遺伝子組み換えのような規制もなく、日本でも法整備が進み、届け出だけで実用できるようになりました。当社の技術は従来の偶然に頼ってきた編集技術ではなく、狙った変異を起こすことができるため、開発期間の大幅な短縮が可能です。ゲノム編集ツールの商用ライセンスも取得済みです。加えて独自の汎用デリバリー技術や高効率のゲノム編集キットも開発、特許を取得しています。これらの技術を使うことで特に難しいとされる商用作物の品種開発が可能となり、それが当社の大きな強みのひとつです。すでに耐寒性トマトや、バイオ燃料作物「ジャトロファ」の開発など、食品、種苗会社ほか国内大手10企業との共同品種開発を進めており、海外との取引も始まっています。
市場規模は、世界のバイオ市場16兆円のうち、アプローチ可能な領域だけでも128億円と試算しています。現在は共同開発の連携先拡大に努めていますが、5年以内に自社開発種苗の生産・販売を目指します。
提案名:バーチャル避難訓練:フェーズフリーな施設案内VRを関連付けて
プレゼンター:株式会社ジオクリエイツ 本田司氏
20年来、建築分野のVR、デジタルツインで国内外のさまざまな都市計画、高層建築などに関わってきましたが、最近では生成AIを使う事例も増えてきました。建築で重要なのは、人との調和です。建築設計等に視線や感受(脳波など)を取り入れ、これをAI処理することで、建築物の付加価値が大幅に向上します。目指すところは、建築の「つくる時代」から「つかう時代」への変化。言い換えれば、新しい人間中心のレジリエントな都市・建築基盤の構築です。
それを実現するのが、VR用データベースツール「ToPolog」です。人の視線や脳波などのデータなどを取り込むことで、快適でユーザビリティの高いインテリアや、売上を向上させる間取りや商品ディスプレイ等の提案ができます。この「ToPolog」を使った「バーチャル避難訓練」を積極的に展開していきます。これは、ブラウザ上で50~100名程度が同時に参加し、バーチャル空間内で避難を体験できるものです。今年度は東京渋谷区や福岡県福岡市の施設等で、都市街区や自治体の施設と関連付けた導入実績ができています。
さらに、「ToPolog」内に蓄積された避難訓練に係るデータの、他サービスへの応用も視野に入れており、東京消防庁と共同し、「住まいの防火防災診断」アプリ(スマホ撮影により危険個所が判定できるもの)を構築中です。BAPを契機として、三菱総研と連携しつつ、レジリエントな建築、都市、そして社会の構築に向けた共創パートナーを募りたいと考えています。
提案名:多様な人材の活用で、日本を再び科学立国に。
プレゼンター:株式会社tayo 熊谷洋平氏
博士人材は専門分野だけでなく、論理的思考や高いITリテラシー、チームマネジメントや海外経験・英語力といったさまざまなトランスファブルスキルを持っている、未開拓のイノベーション人材プールです。このアカデミア人材のイノベーション領域での登用を促進し、日本を再び科学立国にすることが当社のミッションです。
博士人材を、イノベーション創出に取り組む企業にマッチングするのが、当社が提供する実名SNS「tayo」です。博士人材、研究者らには無料登録およびデジタル名刺ほか各種webユーティリティを無償で提供。このアカデミア人材を活用して、大学発ベンチャーやディープテックスタートアップには研究開発人材の紹介を、また企業の研究開発・新規事業開発部門にはコンサルティングを提供します。現役の研究者、アカデミア人材を提供できることが、競合他社には真似のできない強みです。難しいと言われるマッチングにはAIツールの開発も進めています。
現在登録者1200人、売上は5000万円程度ですが、3年後に登録5万人、売上10億円、5年後には海外展開を図り、登録15万人、売上30億円を目指します。10年後の目標は博士号を持つユニコーン企業創業者20名の輩出です。落合陽一先生のような人が20人出れば、日本は変わるのではないでしょうか。BAPを通して、事業開発のパートナーだけでなく、tayoのクライアントとなる企業も求めています。
提案名:Redefining aging with better sleep experience: AI-powered FRENZ Brainband
(良い睡眠体験で「加齢」を再定義:AI搭載のFRENZ Brainbandによる)
プレゼンター:Earable Neuroscience Inc. Doan Kieu My (Kimi)氏
Earable Neuroscience is at the forefront of addressing the global “poor sleep pandemic” with its groundbreaking sleep tech AI wearable, the FRENZ Brainband. Recognizing the pervasive issue of sleep problems affecting 40% to 70% of people worldwide, Earable aims to tackle this challenge by offering a precise sleep-tracking solution with real-time audio therapy. Unlike existing products, the FRENZ Brainband utilizes advanced technology, including dry EEG sensors, integrated bone connection speakers and digital audio therapy, to enhance sleep quality without the need for invasive solutions.
The significance of proper sleep is emphasized by Earable’s Chief Growth Officer Kimi Doan, with benefits such as improved immune system function, anti-aging effects, and enhanced cognitive performance during waking hours. The economic impact of sleep problems is substantial, with annual losses amounting to 3% of GDP globally. Earable addresses this by providing a solution that not only tracks sleep quality but actively contributes to improving it with science-backed solutions.
The FRENZ Brainband can track seven different biometric data in real-time, including heart rate, head motion, breeding rhythm, EEG (brain electrical signals), EOG (eye motion activities), and EMG (facial muscle movement), offering precise insights into timestamped sleep stage and sleep quality evaluation. Its effectiveness has been validated through large-scale research and trials, achieving an impressive 89% accuracy level compared to the accuracy of gold-standard PSG hospital equipment, while normal wearables usually reach only 40-55% of accuracy. The device has already demonstrated positive results in reducing the time it takes individuals to fall asleep during trials, helping over 400 people with an average reduction of 24 minutes.
Our target audience includes wellness seekers, middle-aged and the elderly experiencing non-medical sleep issues. Direct reach to customers is facilitated through mass media, healthcare professional networks, and B2B channels with hospitals, clinics, and wellness centers. The company’s competitive and experienced team members, such as CEO Prof. Tam Vu and Chief Medical Officer Prof. Robin Deterding, position Earable as a leader in sleep technology.
The social impact of sleep problems in Japan is particularly significant, with over 77% of people sleeping less than 7 hours per night. Earable aims to be a competitive and reliable partner in addressing this issue, contributing to the improvement of Japan’s productivity and GDP while fostering her into a “happier aging nation.” Despite being at the pre-series-A stage, Earable is already commercially ready globally for mass production, having received accolades such as the CES Innovation Award 2023 and 2024 for aging technology and wearable technology.
(ICF事務局意訳)
当社は世界中の人々が直面している睡眠不足問題の解決を目指しています。睡眠不足は様々な疾病リスクや生産性低下に繋がり、GDPの3%の損失にも相当する世界的な社会課題です。
当社が開発したFRENZ™ Brainband™はヘッドバンド型のデバイスで、内蔵されたセンサーにより、EEG(脳波)、EOG(眼球電図)、EMG(表面筋電位)、SpO2(酸素飽和度)、心拍数など睡眠に関わる生体データを高精度且つリアルタイムにトラッキングします。そして、認知行動療法に基づく科学的に裏付けられた音楽ライブラリから、ユーザーに最適なコンテンツを骨伝導スピーカーで流し、非侵襲的にユーザーの睡眠の質を高めます。オックスフォード大学とコロラド大学との共同研究ではFRENZ™ Brainband™はゴールドスタンダードであるPSG(終夜睡眠ポリグラフィ検査)と比較して89%の精度で睡眠の質を把握できることを示し、同製品を使用することで、ユーザーの入眠時間が平均24分早まることが確認されています。同製品は、医療専門家、病院、クリニックなどを通じて、健康志向者や睡眠に悩んでいる中高年に提供されます。
日本は、一日の睡眠時間が7時間未満の方が77%を超える、睡眠時間が非常に短い国です。当社は、既に世界へデバイスを販売する準備を終え、エイジング技術とウェアラブル技術に対するCES Innovation Awardなどの賞を受賞しています。人々の睡眠の改善と生産性向上に貢献し、特に日本においては「幸福な高齢の国」に向けたパートナーとなることを目指しています。
【講評】※発言順
リチャード・ダッシャー氏
スタンフォード大学 アジア・米国技術経営研究センター所長
今回の審査は、あたかもリンゴ、オレンジ、バナナ、いろいろな果物の中からひとつを選ばなければならない難しさがありました。それぞれのファイナリストに良さがあり、それぞれに大きな社会インパクトが予想されます。非常に難しい意思決定でした。受賞には至らなかった企業でも、このファイナリストになったことは絶対に良い経験になると確信しています。このあとすべての企業の皆さんと、しっかりとお話ししたいと思います。審査員に選んでいただいて大変光栄に思います。
続いて、各受賞者に対してもコメントを述べたいと思います。私からは、海外から応募されたSWAT Mobility、Earable Neuroscience Inc.に感謝の言葉を述べたいと思います。
I am so happy that we have companies from overseas that have decided to come to Japan and think that the Japanese market is a place to have world impacts. I am also sure about that, and I look forward to talking with you more in the future.
(ICF事務局意訳)
今回のBAPには、海外からのスタートアップ参加者もいらっしゃいまして、とても嬉しく思います。海外スタートアップの皆様は日本市場でグローバルなインパクトを持つ場所だと考えて、それに私も確信しており、将来的にもっとスタートアップさん達とお話しできることを楽しみにしています。
椙山 泰生氏
京都大学名誉教授/椙山女学園大学現代マネジメント学部教授
7社すべてが、素晴らしいプレゼンで、非常に楽しく審査させていただきました。なかでも、やはりICF賞を受賞されたSustineri株式会社、非常に面白いことをやっていると感じます。これから事業化に向けた課題はたくさんあるでしょう。それについて質問もしましたし、課題は山積みかと思いますが、それを超える可能性があると強く感じました。
他の企業も非常に特徴があり、インパクトもあると感じました。以前、私は京都大学で教えていて、今は名古屋にいるということもあって、グランドグリーン株式会社にはとても親近感を覚えています。ゲノム編集というビジネスモデル構築が難しい領域で取り組まれていますが、将来像、それがもたらす社会インパクトの大きさを考えると非常に重要な領域のお仕事だと思います。会社として生み出す価値を明確化していくと、より期待できるビジネスに成長できるでしょう。名古屋大学のベンチャー育成システムにも微力ながら関わっていますので、そういうところでもご支援できればと思いました。
校條 浩氏
NSV Wolf Capital マネージング・パートナー
前のお二人がおっしゃったように、本当に差がありませんでした。差というよりも、こちらが1番というものが、あちらは6番というようなに真っ二つに意見が分かれたりしたのですが、これはすごくいいことです。「尖っている」ということで、だからこそ見方によって全く逆になってしまうだけの話。それだけ素晴らしいファイナリストが多かったと思います。本当に皆さんありがとうございました。私もとても勉強になりました。個人的に「眠り」に興味があるので、Earable Neuroscience Inc.に一言。
For Earable, this can be a perfect product if it is accepted by consumers in Japan. I would be happy to be the first customer (either in Japan or the US). You might also want to resolve the marketing issues like price and business model and think about questions, such as: Is it just the product to sell, or the service model you want to sell or rent to others and receive service fees, or, collaborating with doctors or other institutions, such as train drivers who may need to maintain a healthy lifestyle to ensure operation safety. If your product can be approved by the FDA and PMDA, then it will be a different product with a more prominent future. I am looking forward to more progress in your business and, once again, I will be happy to be the first customer.
(ICF事務局意訳)
この製品が日本で受け入れられたら、完璧な商品になると思います。私は最初のユーザーになってもいいですよ。そしてもちろん、商品価格などのマーケティングやビジネスモデルの課題も考えるべきです。たとえば、製品だけでなく、サービスモデルも他者に貸し出してサービス料を受け取るのか、医師などと協力して、列車の運転手など健康的な睡眠・ライフスタイルを維持する必要がある人々に提供するサービスを展開するのかなど。もし御社の製品がFDAとPMDAによって承認されれば、より将来性のある製品になるでしょう。御社のこれからの活躍を楽しみにしております。
高塚 清佳氏
新生インパクト投資株式会社 代表取締役
この取り組みも9回目ということで、継続的に取り組む三菱総研の強い意志を感じますし、私自身が関わった数年の中でも毎年レベルが上がりワクワク度合いも高まっていると思いました。
私はインパクト投資を扱っていますが、この分野は、この数年特に注目度が上がり世の中の流れがきていると感じます。「新しい資本主義」の旗印の下、昨年はインパクトスタートアップ協会が設立され、今年は経産省が「J-Startup Impact」を設立しインパクトスタートアップを30社選定しました。私も選定委員を務めましたが、選定過程で話されたのは、「インパクト」の有無や内容は当然大事として、その上で、インパクトをインパクトとして語るだけではなく、その裏にある社会課題、事業の主たる受益者が誰なのか、当社のビジネスモデルはそこに対し有効なのか、と言った観点も外さないこと、特にそれら複数観点の間の「一貫性」を考え抜くことは極めて重要だ、という視点でした。
今日プレゼンを伺いコメントさせていただいた中で、こうした「一貫性」につきいくつか質問もさせていただいたと思います。例えば、株式会社ジオクリエイツさんは、ご事業も興味深くインパクト面でも大いに期待できる技術をお持ちだと感じましたが、さらに、ビジネスモデルと社会課題の面からもストーリーをしっかり整合させられると、事業戦略がさらに厚みを持つのではと感じました。どのインパクトスタートアップさんも、技術・サービスの素晴らしさとインパクトへのポテンシャルを踏まえ、更に、主たる受益者等の複数観点との「一貫性」あるストーリーが組み立てられるよう、ぜひ整理と言語化を深めていただければと思います。
小宮山 宏
株式会社三菱総合研究所 理事長
私が今回一番注目したのは、日本という国がどうなっていくかという点でした。その意味で、私はtayoを一番に推しました。大事なことは、ドクターを取ったものすごくたくさんの人たちが、自分たちの需要、重要性をわかっていないということ。外からも分からない。これは仕方のないことかもしれません。知識が膨大に増えて、しかも局在化しているために、隣のことすら分からなくなっている。大学でどんな研究をしているのか、社会から見ても分からなくなっているわけです。これを繋ぐということが、日本には必要だと思います。そのマッチングをAI、LLMでやられるということで、これがうまくできたら、すごいことになると期待しています。
【特別賞 インパクト賞】
提案名:習慣化プラットフォーム「SmartHabit」
プレゼンター:株式会社WizWe 森谷幸平氏
習慣化プラットフォーム「SmartHabit」を開発・運営。人による伴走サポートとシステムによる自動化の組み合わせで、行動変容に導きます。自治体と連携したコミュニティ事業にも取り組んでいきます。
提案名:海ごみ再資源化プロジェクト
プレゼンター:株式会社REMARE 間瀬雅介氏
廃棄漁具をリサイクルし、意匠性のある付加価値の高いアイテムに再生する事業に取り組んでいます。再生プラントは日本各地に建設中。PRのため、太平洋ごみベルトの探査行を予定しており、サポーターを募集しています。
提案名:更年期デジタルヘルス
プレゼンター:株式会社YStory Janet Yu氏
更年期研究の第一人者と提携するとともに、過去10年分の国際論文を学習したAIによるコンテンツで、更年期女性にパーソナライズされたヘルスケアプランを提供し、ポジティブエイジングの実現を目指しています。
提案名:家庭の省エネによるカーボンクレジットの創出&販売サービス
プレゼンター:株式会社FINBEST 前山翼氏
カーボンクレジットをブロックチェーンでトークン化した個人向け取引サービス「Green Bank」を開発。煩雑でアナログな認証手続きがなくなり、個人でも簡単に環境価値取引に参加できるようになります。
【特別賞 テック賞】
提案名:国産VTOL次世代機を活用したドローン物流
プレゼンター:エアロセンス株式会社 嶋田悟氏
長距離飛行が可能な固定翼の垂直離着陸型ドローンにAI、クラウドを連携させたサービスでパイロットレスでの利用が可能です。一例として被災時の状況把握での利用を想定しており、短時間に広域・高精細な情報収集が可能です。
提案名:ヘルスケアデータの活用とプライバシー保護の両立
プレゼンター:株式会社Acompany 橋村洋希氏
法的なハードルの高いヘルスケアデータの統合的な利用を、安全かつ適法に実現するソリューション「Auto Privacy」を開発、提供しています。複数の事業者が持つパーソナルデータの横断的な利用も可能になります。
提案名:Transport Automation and Monitoring for Sustainable, Safe, and Active Communities
(持続可能・安全・活発なコミュニティ向けの輸送自動化とモニタリングサービス)
プレゼンター:Phenikaa-X Joint Stock Company Dr. Le Anh Son氏
Originating from Vietnam, Phenikaa-X excels in self-driving technology, cloud computing, artificial intelligence, 5G, the Internet of Things, and energy technologies. Our product and service portfolio includes lidar and camera-based solutions, featuring patented advancements in high-definition maps, self-developed drones, robots, and autonomous vehicles. Our revenue comes from two main models: providing innovative solutions directly to end-users and providing platform solutions and autonomous services to external clients. Our flagship products, such as the SAE Level-4 microbus with 5G connectivity and AI-driven high-precision data processing, exemplify their cutting-edge offerings. Our successful PoCs include deploying autonomous vehicles in Ecopark and Binh Duong smart city in Vietnam, utilizing drones for medical aid delivery, and implementing self-driving and assistant robots in various Vietnamese factories. In terms of platform provision, collaborations with industry leaders, including Alpha Asimov Robotics in Singapore, involve deploying delivery robots to enhance logistical solutions in Vietnam. Phenikaa-X’s commitment to innovation and strategic partnerships solidifies its leadership in integrating advanced technologies across diverse applications.
(ICF事務局意訳)
Phenikaa-Xはベトナム発のスタートアップであり、自動運転を軸にハードウェア・ソフトウェア双方のサービス提供が可能です。具体的には、LiDARやカメラを活用した高精細地図作成や経路計画・運行管理システム、自動運転車両、ドローン、ロボットなど、自動運転に関する多様な製品と統合プラットフォームを提供しています。ベトナム初のSAEレベル4自動運転マイクロバスの開発と公道を含む走行実証を達成する等の実績をあげており、人手不足の解消や環境配慮型社会への貢献を目指して活動しています。
提案名:Wrtn, the AI Assistant for All(リートン みんなのAIアシスタント)
プレゼンター:Wrtn Technologies Inc. Kihan “Ken” Kim氏
施設、地図、行政等のさまざまな情報と横断的に連携し、ひとつのインターフェイスでユーザーに最適な情報を提供する「みんなのAIアシスタント」を運用しています。ユーザー属性にマッチしたサジェスチョンも可能です。
【ショートプレゼンテーション】
KOTRAには、今回のBAPに募集段階から積極的にご協力いただき、韓国企業の受賞にも繋がっています。韓国スタートアップの特徴と、日本企業が韓国スタートアップと提携するメリットをご紹介いただきました。
KOTRA(Korea Trade-Investment Promotion Agency/大韓貿易投資振興公社)
金昭浄 (キム・ソジョン/ Sojeong Kim)氏
KOTRAは韓国企業を海外に紹介する役割を担っていますが、今日は日本の企業の皆さんに、なぜ韓国スタートアップと事業連携すると良いのか、その理由をご説明したいと思います。
まず、韓国はスタートアップエコシステムがとても進んでいます。現在、世界スタートアップエコシステムランキング12位、ユニコーン企業は14社で世界10位(CBインサイツ)です。エコシステム成長のきっかけは、2005年に韓国政府がFund of Fundsを組成し、VCへの投資に力を入れたこと。これにより18年間で3兆4000億円のベンチャー投資を引き出すことができ、大きなスタートアップハブに生まれ変わることができました。
日本企業が韓国スタートアップと協業すると良い点を「SDGs」にちなんでご説明すると、まず、Similarity。日本と韓国はとてもよく似ているため、社会課題も似ています。DはDigital Oriented。韓国のスタートアップはDXに強く、デジタルを生活になじませるのがとても上手です。GはGrit。日本語で言えば根性、粘り強い力。熾烈な競争を勝ち残ったスタートアップなのでやり抜く力に長けています。そして、Speedy。韓国特有のトップダウン経営とリーンスタートアップサイクルの速さがあり、スピード感を持って事業を進められます。ぜひ、今回を機に韓国スタートアップにもご注目いただき、連携を検討していただければと思います。
【ブース展示、ネットワーキング】
本件に関するお問い合わせ
三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ 担当:加藤、中村、水嶋
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp