株式会社三菱総合研究所

総会・セミナーMarch 12, 2025第5回 ICFオンライン座談会~ロボット活用(街づくり・農業)~ 開催レポート

ロボットは従来、工場内等の限られた場面で利用されることが一般的でした。しかしAIとの融合が進み、活用範囲が広がり、私たちの生活のあらゆる場面に溶け込みつつあります。この背景からICFでは、様々な領域の社会課題を解決する重要な技術として「ロボット」を特定し、新たな市場・エコシステム創出を目指すための取り組みを開始しました。

そのキックオフイベントとして、2025年2月27日(木)・28日(金)に、会員のハタプロとinahoに登壇いただき、両社が取り組む街づくりと農業の2領域における社会課題と、その課題解決のためのロボットの開発動向・活用方法を共有するオンラインイベントを開催しました。
※本座談会のアーカイブ動画はICF会員限定で配信をしております。こちらをご覧ください。

両日とも40名を超える方にご参加いただき、事後のアンケートでは80%の方が、5段階評価でとても満足(5)・やや満足(4)とのご回答でした。

当日プログラム

■2月27日(木)Day1街づくり

12:00 – 12:10オープニング
12:10 – 12:35取組事例共有
株式会社ハタプロ 代表取締役 伊澤 諒太 氏)    
12:35 – 13:00フリーディスカッション・質疑応答

■2月28日(金)Day2農業

12:00 – 12:05オープニング
12:05 – 12:35取組事例共有
inaho株式会社 代表取締役 菱木 豊 氏)
12:35 – 13:00フリーディスカッション・質疑応答

<結果概要>

【オープニング】
Day1とDay2の各回の冒頭ではICF事務局より、ロボットが様々な領域の社会課題の解決策になることと、基本事項としてロボットを構成する3つの要素(センサー系、知能・制御系、駆動系)を解説いたしました。またICFでは今後、AIと融合することで実現する特化型のサービスロボットに焦点を置いて取り組みを進める旨を説明いたしました。

【ハタプロの取り組み紹介(Day1:街づくり)】
街に暮らす様々な方が抱く課題を解決するため、AI・IoT・ロボット等の受託開発事業を進めるハタプロのビジネスモデルや、同社がソリューションとして提供するAI搭載コミュニケーションロボットを活用した、空港や市街地等における実証についての概説もいただきました。最後に東京都港区における地域一体型の次世代教育プロジェクト「ミナヨク Kids」の概要や、教育分野等における今後の事業方針についてご紹介をいただきました。

【inahoの取り組み紹介(Day2:農業)】
農家の労働力減少や、野菜生産作業の半分を占める「収穫」における大きな負担を解消するため、自動化・省力化に向けてinahoが提供する収穫ロボットの効果と実績や、販売だけではなくレンタルでも提供するRaaS(Robot as a Servise)モデルの概説もいただきました。スマート農業技術活用推進法でも取り上げられた、ロボットが生きる環境づくりの重要性もご紹介いただきました。

【フリーディスカッション】
ロボットと連携した未来の街づくりと農業の姿や、ハタプロとinahoの事業の将来ビジョン等について議論いたしました。また地に足のついたロボット事業とするために、様々なステークホルダーとの業務提携にあたっての工夫や注意点、ロボット開発における費用対効果の検討の重要性が話題に上がりました。当日参加者からいただいた主な質問は以下になります。

以下、Day1:街づくり
【質問1-1】対話型のロボットは生成AIが出現してからできることが大きく変わった印象であるが、生成AIのAPIに限らず、対話型ロボットにはどのような技術的な肝があるか。
【回答1-1】ハードウエアやIoTなどを組み合わせて、技術的な総合力を発揮することが重要である。また技術だけではなく、業界の特有の知見や、ユーザーに受け入れられるためのデザイン、フィールドで実証する知見も必要だ。
【質問1-2】プログラミング教育においてロボットを取り入れることでどのようなメリットがあるか。
【回答1-2】特に子供向けだと、モノ・形があったほうが取っつきやすい。ご年配の方にも、かわいらしいデザインのロボットがあることで、デジタルが受け入れられやすいことがある。
【質問1-3】様々なプレイヤーを巻き込むにあたって、またロボット開発と街づくりの2つの事業の方向性で、どのようにバランスを取っているか。
【回答1-3】街づくりに取り組むと、ロボット業界に慣れ親しんでいない方々とも協業する必要がある。バランスを取るのは難しいが、ハタプロが率先してビジョン・目標を共有することを意識している。

以下、Day2:農業
【質問2-1】モーター等、ロボットの部品が壊れることをベースにビジネスを組むとは、具体的にどのようなことか。
【回答2-1】部品の在庫管理や修理などのコストはinahoが持つことになっており、費用に盛り込んでいる。しかし部品の耐久性は年々上がっているため、自然とコストが抑えられる印象である。
【質問2-2】ロボット活用で自動化しきれないところはどうするか。自動化の割合(自動収穫の割合)と費用対効果はどのような関係か。
【回答2-2】人の作業のなかで「移動」コストがもっとも大きい。ロボットが70%の作物を自動収穫する場合と、80%を自動収穫する場合で、ロボットの取り残しを収穫する移動時間は変わらず、結果として人の作業時間はほとんど変わらない。そのため自動化の割合を上げることに注力しすぎないほうが、費用対効果の面で効果的である印象がある。
【質問2-3】農家との期待値調整等、ロボットを取り入れやすい環境づくりという点でコミュニケーションを取るうえでどのような心がけをしているか。
【回答2-3】特に最初のうちは農家に対して「こんなことできます」とはあえて言わないようにしており、「農家の成長を一緒に見守らせていただくパートナー」という立ち位置を取っている。お付き合いを続ける中で、できることが増えていき、期待値をあげることができているのではないか。

ICFでは今後、特に特化型のサービスロボットに注目し、社会課題解決に転用することで新市場を創出できるような共創活動を推進していく予定です。

本イベントに関するお問合わせ

三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ 担当:山田・石田
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp

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