株式会社三菱総合研究所

総会・セミナーJanuary 07, 2026第11回 ICFオンライン座談会「大学に飛び込め~一緒に未来社会のイノベーションの種を発掘する~」開催レポート

第11回オンライン座談会は、東京科学大学特任教授の真尾氏をお迎えし、グローバルで戦える大学発スタートアップの創出、成長を支援する『Greater Tokyo Innovation Ecosystem(GTIE:ジータイ)』のビジョンや実施体制、取組みを推進するなかでの課題感を共有いただきました。続いて、真尾氏とICF推進オフィスの藤本によるクロストークや、ご参加者との質疑応答も交え「大学と企業が一緒に未来社会のイノベーションの種を発掘する」ためのポイントを議論。最後にGTIEによる未来産業創出プログラム構想(2026年度開始予定)をご紹介いただきました。

※本座談会のアーカイブ動画はICF会員限定で配信をしております。こちらをご覧ください。

プログラム

12:10~12:13オープニング
12:13~12:20GTIEからの課題提起
東京科学大学 特任教授 真尾 淑子 氏
12:20~12:25アカデミアの知の社会実装 課題感 ~大学発スタートアップを中心に~
未来共創イニシアティブ推進オフィス 藤本 敦也(横浜市立大学特任教授)
12:25~12:40クロストーク ~企業と大学とのギャップ~
12:40~12:45質疑応答参加者ディスカッション

座談会内容

  • 大学には優れた研究・技術はあるが、それを社会実装する市場開拓や検討が苦手である
  • スタートアップ経営者候補や事業アイデアを持つ人材が、大学内に不足している
  • グローバル展開を目指すディープテックスタートアップは、特に「技術」「市場」「人材」のすべてが必要。すべてが揃ってこそVCなどの外部から評価を得て資金調達が可能になる。特に、グローバル市場を意識した大きなビジネスモデルを描けるといった適性を持つ人材不足は喫緊の課題

■「アカデミアの知の社会実装 課題感 ~大学発スタートアップを中心に~」
未来共創イニシアティブ推進オフィス 藤本 敦也(横浜市立大学特任教授)
現在、ICF推進オフィスのマネージャーを務めている。MRIでは企業コンサルタントや新規事業創出支援の経験もある。現在はMRIでの職務に加えて、横浜市立大学の特任教授として産学連携に取組み、テクノロジー研究・開発から社会実装まで広範囲に推進。企業と大学、両方での経験を多様な視点に反映させつつ、様々な課題解決に日々尽力している。

―企業と大学が協働するなかで感じている課題(企業側と大学側 両方の職務を知る立場から)

  • 大学と企業は、研究部門同士の連携ではうまく協働できても、事業化段階で歩調が乱れることがある
  • 大学側は「企業の研究部門と事業部門の間にある壁」を認識していないか、解像度があいまいではないか
  • 大学が研究・技術シーズの事業化を目指すには、企業の事業部門との連携が合理的。しかし、大学が持つ従来のネットワークでは、その接続が難しい
  • 大学と企業の間に「ビジネスに対する解像度の違い」「言葉のニュアンス、受け取り方の違い」といったミスコミュニケーションが発生しがちで、企業側が初期段階で好感触を得ていても、後になり不一致が判明し苦慮することがある
  • スタートアップ創出などに向けたチーム構築で、チーム運営やビジネス展開に不慣れな方が中心となると、それに起因する相互理解不足などで、意思決定プロセスの停滞や内部衝突、分裂が発生してしまう
  • チーム構成員の人材不足と同時に、適切な人材要件の認識不足がある(例:営業職経験者をスカウトすれば販売面は万全というわけではなく、その経験内容により適性がある)

■ 企業と大学の協働における課題整理
ディスカッションの論点 ~研究成果からイノベーション創出、社会実装の加速に向けて~

―大学側のネットワーク拡充

  • 研究領域・ルートでの産学連携(例:知財開発で大学と企業が協働し、それが企業の研究にいかされる)は確立されているものの、企業の事業部門との接点が乏しいため、研究成果の事業化で困難に直面
  • 研究からビジネスへの展開や、新ビジネス創出には「ビジネスを作ることができる人材」を含むネットワーク構築が必要。従来型の産学連携とは異なる体制が求められる

―研究者のビジネスへの関心

  • 社会実装に関心を持つ大学の研究者は年々増えている実感があるとはいえ、運営に関わっても、スタートアップ起業・経営を自ら担おうとする研究者は少ない
  • ご自身の研究を通じて社会に何らかの貢献をしたい「思い」をお持ちでも、研究とビジネス展開が直結していない方も多い
  • 起業関連プログラム、アントレプレナーシップ教育を提案するも、関心を高めたり、行動変容を促進したりといったことに難しさを感じている

―産学連携を良好に推進するコミュニケーション構築

  • 大学と企業との間にあるギャップ(同じ言葉でもニュアンス・受け取り方が違う、時間軸/長期(大学)、短期(企業)、ビジネスの解像度、前提となる知識など)に起因する、契約締結や予算確保といった社会実装に関わる歩調の乱れ、プロジェクト停滞を避けるべく、適切な調整(役・人材)が求められる
  • 研究者が持つ「研究に対する熱量」への共感、企業側のビジネスに対する思い(差別化、競合優位性の確保が大事)など、相互の領域についての理解が必要

―人材・支援体制の充実

  • 大学には知財関連の部門やURA(University Research Administrator:大学研究推進員)など研究者をサポートする体制はあるものの、スタートアップ創出や社会実装の際に十分な支援ができる人材配置までは行き届いていないのではないか
  • 経営者候補を企業から大学へ送り出すというような直接的なことではなく、大学のチームに「ビジネスや事業化がわかる人材」が参加することで、チーム運営に好循環が起こるような取組み、仕組みが構築できるとよい
  • 企業の人材が大学に一定期間在籍し、実証や事業化などを支援する「出向」のような制度があるとよいのではないか。スタートアップの立ち上げ期も含めて経営に参加する経験は、企業側人材の成長の観点からもよい

■ 真尾氏より「GTIE Future Core Lab」ご紹介(2026年度から実施予定)

  • GTIE×次世代リーダーによる未来産業創出プログラム「GTIE Future Core Lab」を構想中
  • 企業から大学への人材エフォートとは、特定業務や目的達成に費やす時間・エネルギーの割合のことで、当初案として10%を想定。GTIEが企業人材エフォートへの対価を負担
  • 具体的には、企業に所属する若手人材(新事業開発経験者など)による「大学の研究者の思考整理や新視点獲得のための『壁打ち』実施」などを予定。期間、支援分野などの詳細は募集大学によって異なる

【企業側のメリット】大学の研究シーズを企業の新事業への活用検討・実践(ポテンシャルシーズ)、GTIE提供のアントレプレナーシップ研修やスタートアップ関連プログラム受講による知識向上、大学との連携強化
【GTIE側のメリット】企業の若手人材が大学チームに参加することによる新たなネットワーク構築、チーム活性化など

座談会を終えて

研究を深める大学とビジネスを推進する企業との間にあるギャップを具体的に実感できる座談会となりました。また、産学連携の課題解決を目指した魅力的なプログラムの紹介もありました。企業のビジネス感覚で大学の研究シーズを捉えることで、新事業の創出や社会実装への展開が期待されます。

本イベントに関するお問い合わせ

三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ推進オフィス 担当:水嶋・石田
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp

  • Twitter
  • Facebook