株式会社三菱総合研究所

総会・セミナーMarch 23, 2026ICF京都フォーラム2026 開催レポート

株式会社三菱UFJ銀行(ICF共創会員)と、「地球が持続し、豊かですべての人の自己実現を可能にする『プラチナ社会』の実現」を目指す一般社団法人プラチナ構想ネットワーク(ICF企業会員)の協力のもと、「社会課題をビジネスで解決する」ことを目指すICFが、2026年3月9日に京都からすまホテルにて「ICF京都フォーラム2026」を開催しました。

本フォーラムでは、京都エリアの企業・団体のリーダー層を中心に、関西の皆さまとの協働・連携を通じた未来共創のさらなる推進を目指し、社会課題解決に資する新産業創出に焦点を当てました。基調講演に続くパネルディスカッションでは、日本が直面する大きな社会課題である「完全循環社会」の実現をメインテーマに、日本が世界に先駆けて行うべき取り組みや、新市場・産業創出の可能性と課題について議論を深めました。
その中で、長期的な視点を大切にする企業文化をもつ京都から、完全循環社会のモデルを実証し、国内外に発信できる可能性が示唆されました。

■「プラチナ社会の実現 ~社会課題を解決する新産業創出~」
株式会社三菱総合研究所 理事長
一般社団法人プラチナ構想ネットワーク 会長 小宮山 宏

プラチナ構想ネットワークでは、「地球が持続し、豊かで、誰もが自己実現できる社会」を「プラチナ社会」と定義し、その実現に向けて社会課題を解決する活動を推進している。
日本は「資源のない国」というのは過去の話である。2050年(※)までに、ほぼすべてのエネルギーを国内で供給する「エネルギー自給国家」実現を目指し、再生可能エネルギー、都市鉱山、バイオマス(森林資源の成長分の利活用)といった国内の既存の資源を組み合わせることで、資源自給を高い水準で実現できる。
プラチナ社会の実現を目指すネットワーク活動を通じて見えてきたものは、「森林」「再生可能エネルギー」「人財」「健康」「観光」の5つを新産業として位置づけ、「完全循環社会」を基盤とした産業転換の重要性だ。個々の取り組みは比較的規模が小さく、開発・転換のスピードが遅いという課題があるが、これらの取り組みが連携し5つの領域で産業イニシアティブを創ることにより、プラチナ社会を実現することが可能だ。例えば、2022年に設立した森林産業イニシアティブでは、伐採・再造林・利用の循環を通じ、バイオマス化学や都市の木造化・木質化などの需要が、供給をリードすることで新たな産業を創出する取り組みが始まっている。
さらに、地域の資源や我々の生活に必要なインフラといった「社会的共通資本」に住民自らが出資する「住民出資社会」を構築することで、地域コミュニティが再生し、人々が生涯にわたって成長し続ける土壌が整う。エネルギーや森林、健康などの事業に住民が主体的に関わることで、地域に議論とつながりが生まれ、持続可能な仕組みが根付いていく。
日本の企業は技術と経済システムを革新し、先頭に立つ勇気を持って持続可能な社会を「産業として成立させる」ことで日本を強くすることへの中心的な役割を担う必要がある。
「資源自給・生涯成長・住民出資」を軸に、完全循環型の社会構造へ転換することが、成熟国家日本としての新たな成長モデルとなる。

(※)プラチナ構想ネットワーク 「2050エネルギービジョン」の公表(2026/2/18)
https://platinum-network.jp/2026/02/18/17/00/

■テーマ「ビジネスで実現する完全循環社会 ~循環経済関連ビジネス80兆円創出へ~」

基調講演にて取り上げた循環を再エネで動かす「完全循環社会」の実現に向けて、国内外からの社会的要請、2035年の未来社会、対処すべき課題などについて議論しました。

<パネリスト>
東京製鐵株式会社 取締役社長 奈良 暢明 氏
株式会社バイオーム 代表取締役 藤木 庄五郎 氏
株式会社三菱UFJ銀行 執行役員 京都支店長 小杉 裕司 氏
株式会社三菱総合研究所 主席研究員 古木 二郎
<モデレーター>
株式会社三菱総合研究所 ICF推進オフィス ゼネラルマネージャー 藤本 敦也

■ 議論のポイント

  • 循環経済は環境対策にとどまらず、資源安全保障・産業競争力・企業経営に関わる重要テーマとして認識されている。
  • 企業側では、欧州規制、TNFD、サプライチェーン要求などを背景に、生物多様性や資源循環への対応が任意の取り組みから必須の取り組みへと変化している。
  • 政府の排出削減目標の制約が強くなるほど、追加的な削減に必要な限界削減費用(追加1単位の排出削減にかかるコスト)は上昇する。この時、カーボンニュートラル(CN)のみで削減を進めるとコストが大きくなるが、循環経済(CE)を組み合わせることで削減費用を抑えることができる(参考:https://www.mri.co.jp/knowledge/insight/policy/20240605.html)。
  • 日本には鉄などの都市鉱山をはじめとする国内資源ストックが存在するため、鉄スクラップの回収率を高めるとともに、輸出せずに国内で活用することで、鉄スクラップ需要量の大部分を国内で満たすことができる(参考:https://www.tokyosteel.co.jp/assets/docs/top/top_20251121-01.pdf)。
  • 上記のような廃材を資源として再利用する取り組みは、脱炭素と資源循環を同時に進めながら事業として成立する可能性があり、実際に環境価値を重視する企業からの需要も生まれ始めている(参考:https://www.tokyosteel.co.jp/assets/docs/top/top_20251111-01.pdf)。
  • 日本の製紙業界では、古紙のリサイクルが進んでいるが、古紙から紙を作るには外部のエネルギーが必要になる。一方、木を原料にする場合には、副産物を燃料として使い、エネルギーを生み出せる。環境へのやさしさは、どの視点で見るかによって変わる。
  • 将来的には、製品にどの程度再生材が使われているか、どれだけ資源を循環させているかといった情報が可視化され、それが公共事業での資材調達や金融機関による企業評価の際の判断材料になるなど、循環性が経済活動の中で評価される仕組みが広がる可能性がある。
  • 完全循環社会の実現には、資源や環境に関する情報の可視化、政府や自治体による公共事業での再生材利用の促進、企業活動を後押しする制度整備、そして消費者が環境配慮製品を選ぶ行動変化など、多面的な取り組みが必要である。循環経済は競争ではなく産業横断の協調領域の側面も強く、企業・金融・研究機関・行政の連携を進めやすい。
  • 京都は、長期的視点を大切にする企業文化や自然資本を背景に、完全循環社会のモデルを実証・発信できる地域となる可能性がある。

三菱総合研究所 副社長執行役員 秋田 誠一郎よりプログラムの総括を兼ねたご挨拶後、会場にて懇親会を開催しました。登壇者を始め参加者同士の活発なネットワーキングが行われ、「大きな循環社会や新産業といった一歩上のレイヤーで社会を捉える視点をいただいた」「多くの学びと気付きを得る貴重な機会になった」などのご高評・ご感想の声を多くいただきました。また、イベントを振り返り「パネルディスカッションの時間がもう少しあるとよかった」「長期の将来予測や社会像の発信も期待している」といった課題感を共有するなど、充実した時間となりました。ICFでは今後も、プラチナ構想ネットワークをはじめとする社会課題解決に取り組む組織との共創を通じて、社会課題解決とビジネスの両立を推進していきます。

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本イベントに関するお問い合わせ
三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ 担当:水嶋、奥野
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp

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