一般社団法人プラチナ構想ネットワーク、一般社団法人官民共創未来コンソーシアム、一般財団法人地域活性化センターから共催・後援をいただき「官民連携 2.0 の実現を担う次世代型人財とは」と題してセミナーを開催しました。(開催日:2022年 7 月 29 日)
社会課題を解決する段階からではなく、もう一歩遡って社会課題の「発見」「再設定」の段階からの官民連携の在り方、官民連携人財の要件や育成といった話題を中心に、講演とパネルディスカッションを行いました。当日は会場・オンライン合わせて 130 名を超える方に参加いただきました。
当日の各講演、パネルディスカッション概要は下記のとおりです。
1. 基調講演「プラチナ社会実現に向けた官民連携人財の育成」
(一般社団法人プラチナ構想ネットワーク 会長/三菱総合研究所 理事長 小宮山 宏)
プラチナ構想ネットワーク 会長/三菱総合研究所 理事長の小宮山からは、官民連携がうまくいかない理由として、「行政側が新しいテーマに対して動きが鈍いこと(官の「慣性の法則」)」、「官民双方に、双方の立場を理解する力(他者を感じる力)が不足していること」「官民双方とも、組織が硬直してしまっていること」があるという指摘がありました。このような状況を打開するために必要とされる人財要件について、官民連携の成功事例やプラチナ構想ネットワークでの人財育成の取組を踏まえて紹介。今後は、優れた人財を活かす組織の在り方が問われる時代が来たのではないか、という問題提起をいただきました。
2. 講演①「まちづくりの実践から見えた官民連携のノウハウと人財の必要性」
(三浦法律事務所 パートナー弁護士 (前大津市市長)越 直美 様)
三浦法律事務所パートナー弁護士越直美様からは、大津市市長をお勤めになったご経験から、官民連携の実践とそこで求められる人財についてお話をいただきました。まず、官民連携が着目されている社会的な背景には、多くの自治体の少子高齢化、公共施設の老朽化等の事情から、財政が大変苦しいことがあるという指摘をいただきました。その上で、大津市における具体的な官民連携の事例に基づき、官民連携の三つの類型を整理いただき、それぞれの類型で求められる人財についてお話をいただきました。また、時代の変化とともに自治体の役割が変化していったこと、それに伴い、自治体が新しい役割を積極的に引き受け、新しい組織文化(空間と情報を「解放」する自治体)を生み出していくことが必要であるというご提言をいただきました。
3. 講演②「GDW社会における官民連携人財」
(一般財団法人地域活性化センター 新事業企画室長 吉弘 拓生 様)
地域活性化センター新事業企画室長の吉弘拓生様からは、GDW(Gross Domestic Well-beingの略称)という観点から、官民連携をとらえることについてお話をいただきました。現在、公務員の離職が相次いでいるという現状から、公務員自身が、自らの仕事のとらえ方を転換すべき時がきたというお考えをお示しいただきました。今、社会には、GDPという物質的、客観的な指標から、GDWという真の豊かさ、主観的な指標を重視する考え方が生まれつつあります。公務員にとっても、自分自身のウェルビーイングを実現するような仕事の在り方が必要ではないか、というご提案をいただきました。
4. 講演③「官民連携の現場の実態と求められる人財像」
(一般社団法人官民共創未来コンソーシアム 代表理事 (元川崎市市議会議員) 小田 理恵子 様)
官民共創未来コンソーシアム代表理事の小田理恵子様からは、川崎市市議会議員としてご活躍されたご経験から、官民共創を成功に導く鍵や、そこで必要とされる人財像について、お話をいただきました。まず、官民共創には4つのステップが必要であり、その各段階で必要な人財が変わるというご指摘をいただきました。その上で、官民共創を成功させるためには、公共性を重視する「社会性」と、ビジネスの視点を取り入れた「事業性」の両方が必要であるにもかかわらず、多くの官民連携事例は、社会性のみが重視されすぎているのではないか、という問題提起をいただきました。官民共創をサステナブルに継続するためには経済活動が伴ってこそ、であること。ただ、官民連携事業を実現できる人財が圧倒的に不足しているのが現状。最近では社員や職員に対して、足りない経験とスキルを補う努力を始めている企業や自治体もでてきており、こうした人財を官民双方で育てていくことが急務となっている。例えば、地元で小規模の事業に取り組んでもらうなかで成長してもらうようなやり方もあるのではないか、というお考えをいただきました。
5. パネルディスカッション
パネルディスカッションからは、一般財団法人地域活性化センター シニアフェロー 箕浦 龍一様(元総務省国家公務員)、 一般社団法人プラチナ構想ネットワーク 事務局長 平石 和昭様にもご参加いただき、官民連携2.0、それを実現する人財、そして人財を活かす組織の在り方について闊達な議論が行われました。
まず、民間企業が自治体側に何を求めているのかについては、情報・空間等の公共の保有資産について「オープン」であること、さらには規制緩和である。そして何より重要なのがマインド、首長から職員に至るまで、民間企業の提案に対してオープンであることではないかという指摘がありました。この指摘に対して、公務員自身がオープンマインドであったとしても、組織がそのオープンさを適切に評価する風土になっていないこと、そのために公務員がチャレンジできる機会に恵まれないことが、実は最大の問題ではないかという意見が述べられました。
また、行政の無形資産のうち、行政データにおける官民共創について、意見交換が行われました。民間企業が行政データに大きな関心を寄せている中、自治体ごとにデータフォーマットが異なる、紙でしかデータが保存されていないことなどの特有の課題があり、うまく活用に至らないなどの事例が挙げられ、この課題をクリアするために必要な取組みや発想の転換について、積極的な提案を多数いただきました。
最後に、人財を活かす組織の在り方について、各登壇者から提言をいただきました。組織のトップが職責として官民連携を業務の中に位置づけること、挑戦を評価し失敗を許容する組織文化に変わっていくこと、失敗を検証し改善していく仕組みが必要なこと、探索フェーズにもしっかり投資をすること、自律と価値創造ができる人財を育てるための人財投資を行うことなどが挙げられました。
参加者からは、「現在、市で取り組んでいる課題と重なり、大変勉強になった」、「官民連携に向けて
乗り越えるべき課題が理解できた」、「元首長や官民の方々が忌憚のない意見を述べながら、時代の流
れの中で前に向かう姿勢に感銘を受けた」等々、ポジティブなコメントを多数いただきました。本セミナーを起点として、 ICF では今後、新たな官民連携の機運醸成や具体的な人材育成プログラムの検討・開発にも着手する予定です。
本セミナーに関するお問合わせ
三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ 担当:笠田・薮本
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp