株式会社三菱総合研究所

総会・セミナーOctober 28, 20242024年度ICF中間報告会 開催報告

ICF中間報告会を10月18日にオンライン(Zoom)にて開催し、2024年度上半期のICF活動実績と下半期の活動予定のご報告、会員ピッチでは社会課題解決に向けた官民連携の事例などをご紹介しました。また、事務局から「社会課題解決型ビジネスの新たな事業化・市場形成の手段」と題して話題提供しました。当日は90名を超える方にご参加いただき、盛会となりました。誠にありがとうございました。

ICF事務局長 水田 裕二

2024年度上半期総括

2024年度のICF活動・全体方針を踏まえ、事務局長より上半期の進捗状況を報告しました。
上半期活動内容の詳細は、ICFサイト掲載 2024年度活動報告書をご参照ください。

▼ 会員概況:2024年4月~9月に26社・団体が新規加入
▼ 2024年度の活動・全体方針「3つのアップグレード」に関する進捗状況
 

  1. 社会課題起点(=ICF活動起点)」のアップグレード
    • 「新版・社会課題リスト」の更新作業中(従来の6分野見直し、社会・経済情勢の新潮流盛り込み、社会的インパクト起点の充実など)、今年度内に発刊予定
    • 「各共創活動における起点とゴール」の再認識と共有、社会課題との紐づけ(ジェンダードイノベーション、カーボン・クレジット、人間拡張・バーチャルエコノミーなど)
    • 「未来社会の実現」から捉えた社会課題研究を準備中(SFプロトタイピングの活用:2024年度ICF総会の基調講演ご参照)
       
  2. 「事業共創活動」のアップグレード
    • 「社会課題起点、共創活動、マーケット創造の3点セット」による活動推進(産学連携による女性のためのライフキャリア×ヘルスケア講座、カーボン・クレジット市場の形成・機能化、人間拡張技術の社会課題解決分野での市場形成など)
    • 「社会実装の促進・加速(有用なツール化)」に向け、パブリックアフェアーズ(PA)をテーマに社会実装研究イベント実施。PA戦略手法のオープンリソース化(戦略的市場形成)、ガイドライン研究・検討を準備中
    • 「共創のマネジメントとしてのインパクト測定」手法の応用について検討・準備中
       
  3. 「コミュニティ活動」のアップグレード
    • 拡大ICFコミュニティ形成(重点テーマ別にICF会員+会員外で活動、例:カーボン・クレジットDeep-Dive Workshop)、主要地域ごとのコミュニティ形成(例:関西、中部)、会員間連携・共創の奨励 など

話題提供

続いて、社会課題解決型ビジネスに関する動向と最近の注目点について、ICF事務局より話題提供しました。

社会課題解決型ビジネスの新たな事業化・市場形成の手段について
-社団・財団連携を視野に入れて-

社会課題解決型ビジネスを取り巻く環境
近年、社会課題解決型ビジネスへの注目が官民連携などを通じて高まっているが、「社会課題解決型ビジネス特有の課題」に対応すべく、各所で新たな事業創造のアプローチ・支援方法が模索されている。
「社会課題解決型ビジネス特有の課題」には、ビジネスモデルの複雑さ、短期的マネタイズと社会的インパクトが両立する中長期戦略策定が困難、金融面などがある。また、コレクティブインパクト(集合的なインパクト)最大化のためには、市場創出期から多様なステークホルダーを巻き込むことも重要である。
国内のインパクト投資活動に関する調査(Global Steering Group for Impact Investment (GSG) 国内諮問委員会「日本におけるインパクト投資の現状と課題-2022年度調査-」)によれば、インパクト投資先(投資残高ベース)は、「上場企業」が大部分を占めている。インパクトスタートアップ・エコシステムが官民両方のアプローチにより活況を呈しているものの、成長ステージ初期のスタートアップへの投資は発展途上だといえる。

社団・財団との新たな連携可能性:市場形成に向けて
そのような環境下、ICF事務局では社団・財団法人に注目している。一般的にベンチャーキャピタルやCVCは市場の存在や規模などの経済合理性を重視するが、社会課題解決をポリシーに掲げる社団・財団【例:(一財)ミダス財団、(一社)WE ATなど】の多くが、多様なパートナーと協働してエコシステムを構築し、社会的インパクトを重視したビジネス支援に取り組んでいる。特に市場創出期のビジネスの事業化、市場形成においては、社団・財団との連携も視野に入れた取り組みも有効と考える。

ICF事務局 加藤美季

会員ピッチ:社会課題解決に向けた官民連携の最新事例紹介など

会員の皆さまが取り組んでいる社会課題解決に向けた具体的なアクション、官民連携事例のご紹介並びにICF活動への期待などもお話しいただきました。(以下ご登壇順)

株式会社With The World 代表取締役社長 五十嵐 駿太 氏

課題解決型オンライン国際交流プログラムを構築し、世界中の子どもに持続的な教育環境を届け、より良い社会の実現に貢献する事業を展開。授業の中で、世界中の学校とリアルタイムで繋ぎ、お互いの国・地域のSDGsに関するテーマでデスカッションするなど「未来のグローバルリーダー」人材育成を目指す。これまでに、世界67カ国・546校と繋がり、毎年19,000人以上の学生が本プログラムを体験。国内の多くの自治体とも連携し、国際化戦略支援や不登校学生支援などにも取り組む。また、世界各地の学生と、技術を持つ企業が社会課題解決に向けて共創・イノベーションする(商品開発など)プロジェクトも実施。これまでの実績などを活かして、ICF会員との連携も含め、今後も社会課題解決に資する活動を推進していきたい。
 

京都市 総合企画局総合政策室市民協働・公民連携担当 山村 周 氏

社会課題解決推進のため、公民連携プラットフォーム「KYOTO CITY OPEN LABO」を運営。民間事業者から様々な課題解決に資する提案を受け付け、行政と民間事業者が互いの強み・リソースを持ち寄り、新たなサービスの創出にトライアルすることで、効果的な課題解決、市民サービスの向上、新たな市場開拓や事業機会の創出を目指す。令和3年度からの3年間で90件以上のプロジェクトが成立し、拡大を続けている。様々な分野の課題がますます多様化・複雑化していくなかで、これらに対応しプロジェクトを拡大するためにも、ICF会員との連携、ノウハウの共有などを通じて、オープンイノベーションによる事業効果の最大化を目指していきたい。
 

神戸市 企画調整局 東京事務所長 武田 卓 氏

スタートアップ(SU)発の新しいアイデアやテクノロジーで未来の生活を豊かにする街「Life-Tech KOBE」をビジョンに掲げ、産官学連携のもと包括的なSU支援事業、社会・地域課題解決プロジェクトを推進。市とSU協働による実証実験、ビジネスマッチング、資金調達(SUファンド)、グローバル分野など多角的な支援策を整備している。SUなどと市職員が協働して課題解決に取り組む国内自治体初のプロジェクトとして2017年から開始した「Urban Innovation KOBE」は、現在では広域の課題解決プラットフォーム(Urban Innovation Japan)として展開、日本全国22自治体が参加する。魅力的なまちづくりに向け神戸市が抱える多くの課題について、ICF会員の様々な視点からもアイデア・提案をいただき、協働して社会実装につなげていきたい。
 

株式会社ソーシャル・エックス 共同創業者/代表取締役 伊藤 大貴 氏

「官民共創に最高の体験を。」をビジョンに掲げ、官民共創新規事業開発プラットフォーム「逆プロポ」(企業が関心のある社会課題を提示し、それに対して自治体が課題解決のための企画やアイデアを提案する。従来の公募などのシステムが逆転したような仕組み)をはじめ、社会課題解決型の新規事業開発を支援。「逆プロポ」は自治体側のメリットとして、手続きの公平性を担保した上で、熱意のある企業と自治体が目線を合わせながら、当該企業のリソース(資金など)を用いて、社会課題解決につながる実証実験などを進めることが可能。また、官民共創型アクセラレーションプログラム「ソーシャルXアクセラレーションプログラム」事業を通じて、ビジネスと社会的インパクトの両立を目指す社会課題解決型スタートアップ育成を推進している。ICF会員の皆さまも本プログラムにご興味を持たれたら、ぜひご参加いただきたい。
 

株式会社machimori 社会共創事業部 事業部長 佐々木 梨華 氏

熱海を訪れる観光客はバブル経済崩壊の1991年以降急激に落ち込み、約10年前までは市内の空き家率52.7%で全国の市の中でワースト1になるなど、多くの住民がネガティブなイメージを持つ「課題先進地、50年後の日本の姿」といわれるような衰退した観光地であった。2011年からmachimoriが「100年後も豊かな暮らしができるまちをつくる」をミッションに、ビジネスとしてのまちづくり事業を熱海市内にて開始。中心市街地エリアの価値向上を目的に掲げ「補助金に頼らない民間主導のまちづくり」をすすめた結果、観光客数はV字回復、対象エリア1階部分の空店舗ゼロなど、全国的に注目される地域再生の好事例となった。熱海というフィールドを活用した企業研修、社会課題解決を目指した共創事業開発プロジェクト事例も出てきている。課題先進地だからこそ、熱海を「未来社会の実験都市」にしたい。ICF会員の皆さまとも連携しながら、多様な関係者が共に価値を生み出す社会を構築していきたい。
 

下半期活動予定

2024年度下半期の活動予定、注力ポイントを事務局より説明しました。
 

  1. 新版・社会課題リスト
    • 領域によって、会員からのご意見を聞きながら更新作業中
    • 社会課題リストの更新と並行して、SFプロトタイピングを使った「未来の社会課題」検討ワークショップを12月に開催予定
       
  2. 未来共創プロジェクト(FCP)
     進行中のFCPテーマは下記の通り。2025年3月に最終報告予定
    • カーボン・クレジット(脱炭素アクセラレーションLab活動)
    • 人間拡張・バーチャルエコノミー
    • 博士人材活用型イノベーション創出
    • 産学連携型・女性ミドル層リカレント教育
       
  3. コミュニティ活動
    • 「ICFオンライン座談会」の開催(Zoomウェビナー): 設定テーマに沿って、ICF会員から活動内容を紹介いただき、その後、座談会形式により課題解決のヒントなどを探る
      第1回テーマ「地域創生」 開催日時 2024年11月8日(金)15:00~16:00
       プログラム詳細、お申込みは こちらから
    • 会員ヒアリング: 今後のICF活動ブラッシュアップのため11月後半から個別ヒアリング実施予定

今後の活動については、会員宛の配信メール(「ICF News/月1回発信」、個別イベントご案内)に掲載の各種イベント・セミナー情報もあわせご確認ください。

社会課題解決に向けた具体的な共創活動支援、ビジネス構築から実装事例の創出・支援に繋がるよう、2024年度下半期も皆さまの積極的なご参加、ご支援をお願い申し上げます。
また、興味を持たれたイベントなどがありましたら、お気軽に事務局宛にご連絡ください。

ICF会員限定で当日のアーカイブ動画をご案内しております。こちらからご覧ください。

本イベントに関するお問合わせ

三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ 担当:笠田
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp

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