今回は「共創のマネジメントを考える ~インパクト測定手法の応用可能性~」をテーマとしたオンライン座談会を「入門編(11/27)」と「応用編(12/11)」の2回に分けて開催いたしました。
※本座談会のアーカイブ動画はICF会員限定で配信をしております。こちらをご覧ください。
インパクト測定(入門編) 開催日:11月27日(水)12:00-13:00
オープニング
昨今、「インパクト」という言葉が広く使われるようになり、インパクト評価・インパクト投資・インパクトIPOなどが注目されています。本座談会はインパクト測定をマネジメントツールとして活用することに焦点を当て、トークンエクスプレス株式会社 紺野氏に登壇いただきました。ICFとしては、インパクト測定を誰でも使えるオープンツールとして普及させることを目指しています。
トークンエクスプレス株式会社 紺野氏からの話題提供
〇社会課題解決型ビジネス
ESGの広まりやコロナの影響で、社会的課題の解決が重要視されるようになり、収益を得ることとポジティブな社会変化をもたらすことの両方が必要になってきた。
〇インパクト測定の方法
事業や活動が社会に与える変化を測定し、目指す姿にどれだけ近づいたかを評価することをインパクト測定と定義し、インパクトの設計、実行、評価、改善を繰り返すことで、インパクトを生み出すサイクルを回す。
〇具体的な事例の紹介(2件)
①株式会社笑美面(えみめん)
事業内容:介護業界で高齢者住宅の紹介事業を展開。
社会課題:介護家族の負担を軽減し、心理的な抵抗をなくすことを目指す。
成果:株主や社員に対する信頼を高め、退職者の減少に寄与。
②パナソニック株式会社
事業内容:EV充電機のシェアリングサービス「エブリアチャージャーシア事業」。
成果:複数の企業や自治体が参加し、社会的インパクトを明確化することで事業の信用力を向上。
質疑応答
Q.地方創生のインパクト測定について
A.地方創生の取り組みによるインパクトは、広さと深さの両方を意識することが重要。広さは多くの人々の行動変化、深さは生活や行動の大きな変化を指す。
Q.インパクトを測定するための数式はあるのか
A.インパクト測定には公式の計算式はなく、対象とする人々の変化に応じて指標を設定。誰の、どういう変化に注目するかを具体的に考えることが重要。
Q.定量的に測定しづらいインパクトの評価について
A.ウェルビーイングや文化などの測定しづらいインパクトについても、行動変化に結びつけることで評価可能。具体的な行動変化を指標として設定することが重要。
Q.ネガティブなインパクトの対応
A.まずはポジティブなインパクトを出すことに集中し、ネガティブなインパクトが確認された場合に対応する。
Q.成果報告と上層部への承認
A.上層部が期待するロジックや検証結果を提示することが重要。具体的なフィードバックを得ることで信頼感が生まれ、成果報告や承認が得られる。
Q.財務指標とインパクト指標
A.財務指標とインパクト指標は切り離して考えるべき。インパクト指標が直接株価に影響することは少ないが、事業戦略や買収などを通じて間接的に影響することはある。
Q.日本におけるインパクトの浸透
A.インパクト投資がインパクトの広まりを牽引しているが、事業会社側が社会的変化を生み出すためにインパクトを活用することが重要。
※本座談会のアーカイブ動画はICF会員限定で配信をしております。こちらをご覧ください。
インパクト測定(応用編) 開催日:12月11日(水)12:00-13:00
オープニング
インパクトという概念は、SDGsやESGといったテーマと密接に関連しており、スタートアップから大企業、自治体まで幅広く浸透しています。(インパクト測定には良い面と悪い面があり、それらを理解し使いこなすことが重要です。例えば測定結果を通じて事業の改善点を見つけることができる一方で、測定方法や指標の選定が難しい場合もあります。)
今回は共創活動をどのようにうまく回していくか、新しい分野でのインパクト測定の適用を紺野氏と株式会社NTTデータ 森田氏と共にディスカッションをしました。
株式会社NTTデータ 森田氏からの共創活動事例の紹介
〇インパクト設計の取組み
「仕事と介護の両立」をテーマに、ビジネスケアラー(介護をしながら働く人々)をサポートする事業を検討中。
紺野氏の支援を受け、ロジックモデルを策定し、企業の損失額を抑制することやビジネスケアラーの社員を取り巻くステークホルダーに対して具体的な指標をKGI/KPIとして設定。
〇学びと気づき
① 社会価値の「言語化」と「定量化」の難しさ
②訴求対象による見せ方の工夫(社会インパクトを誰に訴求するかによって見せ方を変える必要がある)
③専門家と第3者の意見の重要性
④ビジネスモデル策定のフェーズでインパクト設計を並行して行うと効果的
〇共創ビジネスにおけるインパクト測定の課題
共創パートナーとの目標設定が複雑になる可能性がある。
インパクト測定に精通した人材やリソースの確保が難しい。 等
トークンエクスプレス株式会社 紺野氏からの話題提供
〇社会のあり方にかかる共創
共創の定義は、自社だけでは達成できないことを他者と共に取り組む活動。例えば、ソニーとホンダの協力による未来の電気自動車の開発など。社会のあり方を変えるための共創は、具体的なアウトプット(製品やサービス)ではなく、社会全体の変化(アウトカム)を目指す。
〇共創を成功に導くための要件
- インパクト設計
ロジックモデル:社会の変化を可視化し、課題と理想のギャップを明確にする。ロジックモデルは、インプット(資源)、活動、アウトプット(成果)、アウトカム(長期的な変化)、インパクト(社会全体への影響)で構成される。
KGI/KPI:具体的な目標(KGI)とその達成度を測る指標(KPI)を設定する。例えば、企業の損失額を抑制することをKGIとし、そのための具体的なKPIを設定する。 - コミュニケーション
KGI/KPI:具体的な目標(KGI)とその達成度を測る指標(KPI)を設定する。例えば、企業の損失額を抑制することをKGIとし、そのための具体的なKPIを設定する。
外部コミュニケーション:社会的変化を外部に発信し、仮説検証を行う。例えば、共創活動の成果を定期的に報告し、外部のステークホルダーと情報を共有する。 - クイックウィン
早期の成功体験:短期間で達成可能な目標を設定し、成功体験を積む。例えば、短期的なKPIを設定し、その達成を祝うことで、共創活動のモチベーションを維持する。
質疑応答、座談会
Q.大学・企業・自治体との社会共創の連携における成果指標の設定が難しい
A.社会共創は社会の変化を目指すものであり、具体的な人々の行動変化にフォーカスして成果指標を設定することが重要。これにより測定が容易になり、具体的な活動の有効性を検証できる。
Q.共創パートナーとのインパクト指標の共有と進め方について
A.共創パートナーの関心事項を引き出し、信頼関係を築くことが重要。最初は詳しく説明しすぎず、相手の関心を引き出しながら進める。
Q.投資家に対してインパクトをどのように説明するか
A.財務的なリターンの説明が前提であり、その上で社会経済への影響を説明することが重要。貨幣価値化よりも、誰を助けるのかという具体的な影響を伝えることが効果的。
今回の座談会を通じて、インパクト測定と共創マネジメントの重要性が改めて浮き彫りになりました。特に、社会価値の言語化と定量化の難しさ、共創パートナーとの信頼関係の構築、具体的なエピソードやストーリーを通じた大義の伝え方など、多くの実践的なインサイトが得られました。
※本座談会のアーカイブ動画はICF会員限定で配信をしております。こちらをご覧ください。
本イベントに関するお問合わせ
三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ 担当:水田・石田
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp