株式会社三菱総合研究所

総会・セミナーFebruary 14, 2025第4回 ICFオンライン座談会 「企業とNPOの連携による社会課題解決」開催レポート

2025年1月30日に「企業とNPOの連携による社会課題解決」をテーマにICFオンライン座談会を開催しました。

※本座談会のアーカイブ動画はICF会員限定で配信をしております。こちらをご覧ください。

1オープニング
2共助共創を通じた社会課題解決の最大化を目指して
ICHI COMMONS株式会社 代表取締役 伏見 崇宏 氏
3望まない孤独のない社会の実現に向けて
特定非営利活動法人あなたのいばしょ 理事長 根岸 督和 氏
4フリーディスカッション・質疑応答

ESGやステークホルダー資本主義、インパクト投資等の動きが強まるなかで、企業には経済的価値だけを追求するのではなく、社会的価値の提供、社会課題を解決する事業の創出が求められてきています。一方、従前より社会課題の最前線で活動をしてきたNPOにも、持続可能性の点から人材確保、後継者の育成、収入源の多様化といった課題に直面しています。こうした状況下において、両者が対等な関係性のなかで、社会課題の解決に向けて共創機会を持つことで、社会イノベーションやコレクティブインパクトの創出に繋がるのではないかと考えます。 今回は、社会課題の解決に取り組むすべての人や組織の共助共創を支える活動に取り組んでいるICHI COMMONS株式会社 伏見代表と自死や望まない孤独・孤立対策をおこなうNPO法人あなたのいばしょ 根岸理事長のお二人から、それぞれのお取り組みをご紹介いただき、企業・NPO連携の現状と課題、今後の実現可能性についてディスカッションを行いました。

誰がどこでどんな社会課題解決の取り組みをしているかが可視化されておらず、結果としてセクター間の連携ができない、不足している状況。より効率的かつ効果的な協力の仕組みが必要との課題感を踏まえ、企業とNPOの連携を促進するプラットフォームサステナNet」を運営。社会課題の解決に向けた「共助共創」というテーマのもと、企業とNPO、自治体、個人が協力できるエコシステムの構築を目指している。

ICHI COMMONS株式会社 伏見代表

例えば、企業が投票形式で支援先を選ぶ寄付コンペのような従業員参加型の社会貢献活動の促進や自社のビジネスがどのように社会課題に関連しているかを可視化するインパクトレポートを企業に提供し、事業と社会的影響の両方を理解できるような取り組みもおこなっている。

望まない孤独や自殺リスクのある個人に対して、国内外のボランティアで24時間365日支援を提供している。2020年の開設以来、累計120万件、1日、1,000件以上の相談が寄せられている。相談件数は圧倒的に女性が多い(約8割)。相談時間帯も22時~26時がピークとなっており、海外在住のボランティアの協力を得ながら対応している。テキストベースのチャット相談がメインということもあり、10代~20代、30代の利用者が多い。自分達の役割はあくまでも気持ちのマイナスをゼロにすること。傾聴のノウハウが強みと考えている。
すべての相談内容をデータ化している。テキストデータの分析により、長時間労働や介護問題、キャリアの悩み、こどもの貧困等、社会課題を構成する要素が表層化する前、水面下にある個人の悩みを捉え、これを可視化し社会全体に提言する役割を担っていきたい。

NPO法人あなたのいばしょ 根岸理事長

人物金に関して福祉活動と経済活動の違いを超えて企業とNPOがどう連携すればよいのか。また、持続的成長という観点ではNPOの人材・組織作りは日本にとって重要であり、社会を変革できる人材が新卒で入社したいと思えるようなNPOに引き上げていきたい。

以下の論点でディスカッションが行われました

● 企業・NPO連携の進化や可能性について:
大きな流れとして状況の変化が生まれている。例えば、経済同友会が提言している「共助資本主義」のなかでも、民間企業が社会課題解決の推進をしなければならない。そうであるならば、ソーシャルセクターとの連携は不可欠であるとしている(「ソーシャルセクター連携」 のすすめ~共助経営のためのガイダンス~。一方で、時を経てNPOも進化している。これまではボランティア団体や自治体の下請け的な印象が強かったが、経済合理性は別として社会課題の現場に入り込んで、その解決を担っているという認知がされてきている。こうしたなかで新たな連携の在り方や可能性も生まれており、単に社会課題解決の取り組みが前進するだけではなく、ソーシャルセクターの成長にも繋がるものである。また、法律や政策が変わる可能性もある。(伏見氏) 

企業からメンタルヘルスの文脈で問合せが増えてきている。これまでは問合せの多くが外資系企業であったが、徐々にではあるが、日本企業からも増えてきている。ある鉄道関連グループ企業と連携し、駅や商業施設のなかのトイレや従業員施設のなかに、あなたのいばしょのステッカーを貼っており、そこから吸い上げたデータを分析して、乗客や従業員の悩みを可視化して対策を講じるようなことも始まっている。(根岸氏)

●  企業・NPO連携の好事例、模範事例について:
先ずはお互いを知るところから始めることが重要と考える。急に企業がNPOと連携しようということにならない。本質的な共創を考える際、想いやシンパシーはとても大事。また、「アセットマッチング」にも力を入れている。それぞれが持っているアセットが交わるからこそ生まれる価値を作ることが良い共創テーマにも繋がる。(伏見氏)
※NPOと企業が互いに持つアセットを活用した新たな共創モデルとして、広島県の過疎地域で行われた「子供テックキャラバン」の事例を紹介いただきました。

企業ではないが、地方自治体との共創も始めている。当団体が保有する24時間・365日の窓口対応の仕組みを有償で提供するもの(これまで全国7自治体に提供)。先日は盛岡市と協定を締結した。これは市長自身が、子どもの自殺やメンタルヘルスに強い想いを持っており、1年間の提案活動を経て実現したもの。例えば、今後は自治体をフィールドして企業とも連携する等、点を面にしていくようなやり方もあると考える。(根岸氏)

ICFでは、今後とも社会実装の促進に繋がるテーマを取り上げ、セミナーやワークショップの開催を企画して参ります。

以上

  • Twitter
  • Facebook