2025年3月26日、「モノづくり系の共創エコシステム」をテーマとしたオンライン座談会を開催しました。
※本座談会のアーカイブ動画はICF会員限定で配信をしております。こちらをご覧ください。
プログラム
12:00~12:05 | オープニング・メッセージ 登壇者:水田 裕二(三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ 事務局長) |
12:05~12:20 | 川崎重工業株式会社「KAWARUBA」ご紹介 登壇者:原 純哉 氏(川崎重工業株式会社 企画本部 イノベーション部 共創課 課長) |
12:20~12:35 | 三菱重工業株式会社「Yokohama Hardtech Hub」ご紹介 登壇者:原 和也 氏(三菱重工業株式会社 総合研究所 オープンイノベーション推進室 テクノロジースカウティンググループ グループ長代理) |
12:35~12:55 | 座談会・質疑応答 |
12:55~13:00 | ラップアップ |
座談会内容
今年度最終回となる第6回オンライン座談会では、日本の製造業を代表する川崎重工業様、三菱重工業様の2社をお招きし、それぞれが展開されている「共創の場」(「KAWARUBA」、「Yokohama Hardtech Hub(YHH)」)についてご披露いただきました。
◆KAWARUBA(by 川崎重工業株式会社)
KAWARUBAは2024年11月、羽田イノベーションシティ内に新設されたばかりの共創空間です。ソーシャルイノベーションカンパニーへの変革を目指し、「社会課題にいち早く飛び込み、未来の当たり前を、ともに」を目標に立ち上げました。
KAWARUBAは、社会課題解決に向けた着実な社会実装を睨んで、特に「1→10の事業化推進」機能の強化に着目して設計されています。当初の事業テーマは、水素・カーボンニュートラルとソーシャルロボットに重点を置いてスタートしました。
まだ開設後わずか4か月余りですが、すでに数多くの取り組みが進行しており、多様なステークホルダーを巻き込みつつあります。
◆YHH(by 三菱重工業株式会社)
YHHは2020年に三菱重工業・横浜事業所内の一画に設立されました。KAWARUBA新設に際し、先行事例の一つとして参考にされた施設でもあります。
発足当初より、自社利益のためではなく、社会のために必要な場(=モノづくりエコシステム)として企画・設計され、運営されてきています。
日本の製造業を中心とする産業育成の視点から、社会に対してどんな価値提供ができるかに拘った共創の場づくりを一貫して展開中です。
◆ディスカッションのポイント
【論点1】 「共通点」と「相違点」
まず両社が取り組む共創の場づくりにおける共通点と相違点について伺いました。
共通点は、技術を通じた社会実装を目指した「共創の場」である点。あくまで社会価値を起点(基点)とした取組であり、自社利益を優先させた活動ではない、との共通した理念に基づいています。
また大きな意味での相違点はないものの、自社利益に関する考え方がやや異なる印象。自社利益については基本的に前提としないスタンスをとるYHHに対し、KAWARUBAでは自社を含む共創ステークホルダーが長期的・最終的には利益創出につながることを念頭に置いています。この結果、共創活動のサステナブル性が高まるとの考えに基づきます。
【論点2】 モノづくり系共創エコシステム増加の背景要因
続いて、最近の共創エコシステムに関するトレンド、すなわち増加傾向にあるモノづくり系共創エコシステムの背景要因ついて。
お二人によれば、もともと日本の製造業では、社会価値を優先する利他の精神がサプライチェーンを構成するプレイヤー間で共有・醸成されてきている。皆で課題を共有し、皆で考え、そして動く。その先に、国際的競争力が生まれ、最終的に各社の利益に反映されてきた、というもの。
製造業では現地現物志向が当たり前である分、協力・協働・共創も当然の動き方。その意味では、共創は昔からあったもので、現在はその形が変わっただけ、いわば現代風にモディファイされたのがYHHであり、KAWARUBAであるとの認識でした。したがって最近のトレンドもごく自然・必然の流れだということです。さらにオープンマインドが加わり、共創の場や活動が広がることが期待されます。
【論点3】 技術と社会課題(解決)
最後に、技術視点によって社会課題および社会課題解決の解像度をどう上げられるかについて、現役エンジニアであるお二人に、普段大切にしている考え方・動き方を伺いました。
原純哉さん(@KAWARUBA)によれば、KAWARUBA運営では「社会課題のインパクトへの共感」と「(技術を通じた)貢献可能性」を結び付けて考えることで、自身を含む共創のモチベーションを生み出せるよう努めているとのこと。
原和也さん(@YHH)からは、ともすると陥りがちな「技術の押し売りをしない」、加えて、あくまで「技術(者)が生み出し得る価値創出への着目」が挙げられました。さらに共創活動の前提として、どれだけ自分事化した熱量の高い個人(=共創メンバー)による共創の重要性も指摘されています。
座談会を終えて
今回も、あっという間の1時間でした。
最も印象深かったのが、お二人とも、どの質問(投げかけ)に対しても、淀みなく、明確に「言語化」されていたという点です。関係者を巻き込む中で、とことん考えて、動いて、そしてまた考え抜いた結果なのだろうと思います。
その意味で、やはり今回ご紹介した2社の共創取組は「最前線」であると感じました。日本の十八番であるモノづくり(製造業)を通じた、国際競争力をもった社会課題解決が進むことが期待されるところです。さらには、この動きが日本発の新潮流になることも!
ご登壇の2社のみならず、他の共創エコシステムやエコシステム間連携を含めた今後の動きが大変楽しみとなりました!
本イベントに関するお問合わせ
三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ 担当:石田
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp