9月17日に「ICF Autumn Forum2025」を開催し、会場とオンライン合わせて約100名の方にご参加いただき盛会となりました。誠にありがとうございました。
当日は、上半期に開催した社会課題ディスカッションなど社会課題研究の活動報告、ICFとしての下半期の活動計画を共有しました。また、最近入会された会員を中心に、8社・団体の皆さまから、具体的な社会課題解決に向けた取り組みや共創活動への期待等についてピッチいただきました。

社会課題研究報告
2025年度活動方針のひとつ「基本活動の継続と進化」の具体的なアクションとして、「社会課題リスト2025をもとに共創活動を進め、協業活動へ」を掲げています。本方針を踏まえた上半期の社会課題研究に係る活動報告と、今後の活動予定をご案内しました。
■「社会課題リスト2025」概要説明、活用事例
2025年3月にリリースした「社会課題リスト2025」は、従来の6領域に加え「DE&I」を新設し、全7領域(エネルギー・環境、食農、モビリティ、レジリエンス、ウェルネス、教育・人材育成、DE&I)30テーマで構成。従来、社会課題リストは、技術や政策と結びつけてイノベーション(ビジネス)により課題解決の可能性を探る構成をとっているが、今回は新設した「DE&I」など、解決策が必ずしもビジネスに直結しないテーマも取り上げた。これは問題提起、課題解決へのポテンシャル向上のうえで重要との認識によるものである。例えばウェルネス領域では、次世代がいきいきと暮らしていくために欠かすことのできない「こども・若者の心身の健康問題の増加」を新たなテーマに設定している。
社会課題リストで幅広い領域の課題を知ることで、自社ビジネスの分野に限らず、新たな気づきがある等、好評を得ている。また、社内勉強会や経営のマテリアリティの検討、中長期計画策定時の参考資料、プロジェクト遂行時の社内説得材料として、本リストを活用いただいている。
■ 社会課題ディスカッション(2025年6月~7月)
上半期は、7領域ごとに「社会課題ディスカッション」を開催し延べ98名に参加いただいた。
(ご参考:ICFサイト掲載 社会課題ディスカッション開催レポート)
各回とも単なる課題の共有にとどまらず、共創活動の起点として機能し、子育て支援や博士人材活用など複数のテーマについて具体的なアイデアもうまれた。参加者同士のネットワーキングを通じて、異なる視点や専門性が交差し、新たな事業の可能性が見えてきたテーマもある。
今後は本ディスカッションで出された意見を踏まえた勉強会・セミナーなどの開催を通して、ビジネスアイデアの具体的検討、さらに解像度を上げていく活動を継続していく。
■ 今後の活動予定「出前社会課題ディスカッション」
下半期より、社会課題リストをもとにした共創の場(セミナー、ディスカッション、ワークショップなど)をICF会員企業・団体向けに「出前社会課題ディスカッション」として展開する予定。出前先の目的に合わせて、教養習得型、社会課題掘り下げ型、ビジネス創出型の3タイプを考えている。
ご興味を持たれた方はICF推進オフィスへお気軽にお問合せいただきたい。

ICF推進オフィス 八巻
・ 教養習得型(セミナー形式):社会課題リスト掲載の社会課題について知見を深めることを目指す
・ 社会課題掘り下げ型:領域別など社会課題をさらに分析し、掘り下げたいなどのニーズに対応
・ ビジネス創出型:社会課題解決型ビジネスの創出支援(当社事業部門との連携による支援も可能)
社会課題リストの次回改訂は2027年3月頃を予定しています。現行の7領域の見直しやポテンシャルインパクトのさらなる可視化などを検討していきます。会員の皆さまへのヒアリングや生成AIの活用など新しい手法を取り入れて、より実用的で活用しやすいリストの作成を目指します。
―「社会課題リスト2025」に係る主な広報活動(上半期)―
▼三菱総合研究所note 記事掲載
ハロー、イシュー。三菱総合研究所の「社会課題リスト」を知っていますか?(2025/4/22)
https://note.mri.co.jp/n/nd2cbd70dd154
ビジネスのアイデア出しや戦略づくりに!「社会課題リスト」のリアルな使い方とは?(2025/8/4)
https://note.mri.co.jp/n/nabfc8893a0f4
▼三菱総合研究所YouTube 1分動画公開
三菱総合研究所「社会課題リスト」を1分で紹介!(2025/7/1)
「社会課題リスト2025」はICFサイトから無料でダウンロードいただけます。
https://icf.mri.co.jp/research/research-389/
※ICF会員の方は、会員限定ページに掲載されている「社会課題リスト2025」PDFファイルの閲覧・ダウンロードが可能です。(ダウンロードに際し、個人情報などの入力不要)
https://icf.mri.co.jp/limited/research/research-23568/
(ICFサイト[会員ページ] ボタンからログイン > 社会課題研究/社会実装研究 > 社会課題リスト2025)
下半期のICF活動計画
2025年度ICF活動・全体方針を踏まえた今後(下半期)の活動予定、注力ポイントを説明しました。(2025年活動方針概要は、2025年度ICF総会 開催レポートに掲載しております)

ICF推進オフィス マネージャー 藤本
① 女性活躍推進(DE&I)
- 課題認識:キャリア成長期とライフイベント(妊娠、出産、育児、介護など)の繁忙期が重なることで、女性のキャリア形成に困難が生じるケースが多い。
- 具体的テーマ:賃金格差、健康課題(PMS、更年期障害など)、ロールモデル不足、ケア労働の偏り、目指す社会は「令和モデル」(男女のケア労働分担、支援制度の充実、女性が自分らしいライフキャリアを描ける社会)
- 今後の活動予定:女性のためのトータルライフデザイン講座(椙山女学園/9月開講~’26年2月)
② 博士人材活躍推進(教育・人材育成)
- 課題認識:博士人材のキャリアが「研究者」に限定されがちで、産業界との接続が弱い。
- 具体的テーマ:産官学の連携不足、博士課程進学への不安による研究力低下、日本全体のイノベーション停滞
- 今後の活動予定:過去の勉強会で出たアイデアなどを今後のICF共創活動・政策提案へ反映、博士人材関連セミナーの開催(アカリクとの共催/全3回:9月~10月)
③ 免許返納支援事業構想(モビリティ)
- 課題認識:後期高齢者の自動車運転事故が後を絶たない一方で、免許返納後の移動手段が不十分。
- 具体的テーマ:後期高齢者に対する免許返納推奨、利用者のニーズに合った乗合型移動サービス事業
- 今後の活動予定:具体的な事業構想を自治体へ提案予定
④ ロボット研究会(全領域)
- 課題認識:人手不足の解消に向け、ロボット活用によるサービス価値向上が必要。
- 具体的テーマ:ディープテックで社会課題解決、SF思考を活用した新産業・市場の創造
- 今後の活動予定:ワークショップ、個別検討・議論
⑤ 核融合産業研究会(エネルギー・環境)
- 課題認識:核融合について知り、ビジネスとしての成立・成長可能性を検討する必要がある。
- 具体的テーマ:研究会設立により核融合産業への新規参入促進に貢献
- 今後の活動予定:解説+ディスカッションイベント(内容:フュージョンエネルギー白書の解説、核融合業界の最新情報の共有/12月12日(金))
⑥ ディープテックアクセラレーションプログラム:DAP(全領域)
- 課題認識:社会課題解決において、より大きな社会的インパクトをもたらすべく、高い技術力をコアコンピタンスとするスタートアップ(ディープテックスタートアップ)を対象とした支援が必要。
- 具体的テーマ:持続可能な社会・環境の実現、社会のDXの実現、ウェルビーイング促進
- 今後の活動予定:2026年4月よりスタートアップ募集開始予定、プログラムのなかでメンタリング、資金提供など各種伴走支援を実施、伴走支援を通じて得られた知見を整理したスタートアップサバイバルマニュアル作成
⑦ 日本CDR協議会(エネルギー・環境)
- 課題認識:脱炭素社会の実現・目標達成に向けたCDR(CO₂除去)の取組みを加速させるため、様々なステークホルダーが集まり協議し、活動推進する必要がある。
9月に三菱商事と共同で「日本CDR協議会」設立。 - 具体的テーマ:市場形成に向けた活動の基盤となるエコシステム構築
- 今後の活動予定:テーマ別ワーキンググループ活動、ナレッジ活動、アウトリーチ活動
会員ピッチ
今年度ICFでは先端テクノロジーの活用を視野に入れた社会課題テーマの探索、解決策の検討に重点を置いています。こうした点も踏まえ、先端デバイスやAIの活用事例をはじめ、移動格差の解消、望まない孤独・孤立対策に関する具体的な取り組みを会員からお話しいただきました。(以下ご登壇順)
【技術視点からの社会課題解決】
本田技研工業株式会社
コーポレート戦略本部 コーポレート事業開発統括部 新事業開発部 土井 侑翼 氏
Hondaは幅広いモビリティやサービスを世界中のお客さまにお届けしている総合モビリティカンパニー。近年では、様々なパートナーとの協業・アライアンスを強化し、新たなイノベーション創出を目指している。新事業開発部は、Hondaの新領域創出と迅速な事業化を推進する組織。社会課題や技術を起点に事業のタネを育て、Agile型プロセスで検証・ピボットを繰り返しながらスケーラブルな事業化を追求する。

モビリティにとらわれず、あらゆる領域での事業機会を探索しており、ICFの皆さまともコラボレーションできればと思っている。
芝浦工業大学
動的機能デバイス研究室 工学部 電気電子工学課程 重宗研究室 准教授 重宗 宏毅 氏
応用物理、機械、電気と幅広い分野を横断する研究経験をいかし、動的現象の制御と機能化に注目した研究室を主宰。研究を通して身の回りのものが、よりダイナミックに動くようになり、私たちの生活がより豊かになることを目指す。学生数も多く、教育と研究の両面で社会貢献を意識した活動に取組んでいる。研究開発は、ハードウェアからソフトウェア、材料から情報まで広範にカバー。

コア技術として「紙の自律構造形成(折紙構造)」を活用した自動化や環境対応型デバイスの開発に力を入れており、産業・医療・農業・宇宙分野への応用が期待されている。ICFの皆さまと様々な議論を展開できたら幸いに思う。
株式会社Recursive
代表取締役会長 山田 勝俊 氏
世界レベルのエンジニアが集結したAIスタートアップ企業。より公平で持続可能な社会の構築を目指し、お客さまのビジネス課題を理解し、革新的なAIソリューションを提供している。2030年までの実現を目指し「イノベーションの加速」「生産性の向上」「よりよい教育と仕事」「未来のリスクへの備え」の4分野に注力。

社会課題解決を目指す主に大手企業と連携して、フルカスタマイズAIソリューションを構築し、森林火災抑制や降水量推定モデルなどの環境科学(AI×物理シミュレーション)分野を始め、多様な分野で活用事例を多数展開している。ご興味を持たれたものがあれば、ぜひお声かけいただきたい。
【モビリティ】
ソーシャルムーバー株式会社
代表取締役社長 北嶋 史誉 氏
「すべての人が、いつでもいつまでも自由に移動できる社会へ。」というビジョンを掲げ、介護人材不足と交通・移動弱者の課題を同時に解決し「福祉の現場から社会を変える」ことを目指す。介護施設の業務から送迎を切り離すことで負担を軽減する独自の送迎管理システムを活用し、介護施設と地域の介護タクシーをマッチングするプラットフォームを提供。

施設側はコア業務に集中する時間が得られ、利用者側は介護タクシーに慣れ親しむことで、通院、買い物などでも介護タクシーを利用するきっかけになる。全国5万施設に及ぶ1.2兆円規模の市場を対象に、今後も持続可能な移動支援モデルの構築に取組んでいく。
株式会社CICAC
代表取締役 今氏 一路 氏
「いまも未来も、交通空白地ゼロ」を目指し、人口減少を背景とした地方都市ならではの公共交通が抱える課題解決のため、AIオンデマンドによる最適な配車ルート設定と運営経費の軽減に資するシステム「MITT」を展開する。従来の高額な専用無線や24時間体制のオペレーター配置などが不要となり、スマートフォンやタブレット、LINEアプリを活用した効率的な配車を実現。

全国各地で「MITT」活用によるタクシーや公共ライドシェアの導入が進んでいる。今後も地方に必要な幅広い機能の構築と導入しやすい価格設定により、持続可能な地域公共交通の進化に貢献していく。
【孤独・孤立対策】
TanoBa合同会社
代表社員 宮本 義隆 氏
私たちは、「世の中から孤独をなくす」というパーパスのもと、市民・行政・企業など、さまざまな立場の人々が垣根を超えてつながることで、「取引の経済」から「関係性の経済―つながりを中心とした経済のあり方―」への転換を模索している。具体的な実践として、月に一度開催する「タノバ食堂」を運営。ここでは、スポンサーやボランティア料理人などによる役割分担と、自由価格制という仕組みを通じて、既存の枠組にとらわれない共創型コミュニティを育んでいる。

ICFの皆さまとは、正解を探すのではなく、問いを共有しながら、「経済とはなにか?」を根本から問い直す実践に、共に取組んでいきたいと考えている。
リアルバーチャル株式会社
代表取締役 金谷 建史 氏
「リアルとバーチャルを行き来する空間」を開発し、その中の行動をAIで分析。教育・企業活動など多様な分野でのオンライン体験を革新する事業に取組む。「登校支援メタバース」では、不登校児童・生徒が安心して社会とつながり、自信を取り戻すためのインターネット上の仮想空間(メタバース)を提供。自分の教室の様子を「見るだけ」でよいといった児童・生徒の心理を重視した設計により、リアルな登校へのきっかけづくりを支援。

従来の対面型支援では教室復帰に至らなかったケースでも、不登校の克服に確実な効果がみられている。海外(ジョージア州、フロリダ州)での導入実績もある。「オンラインでリアルを感じる第三の市場」のメタバース展開にも注力しており、技術の力で様々な社会課題解決を目指していく。
【スタートアップコミュニティ】
Startup Island TAIWAN
グローバル ストラテジック パートナーシップ シニアマネージャー Ko Chi 氏
Startup Island TAIWAN(SIT)は台湾政府の国家発展委員会が後援するスタートアップ支援ブランドで、台湾発スタートアップ(台湾発SU)のイノベーションを全世界に広めることをミッションとする。台湾国外初の拠点として2024年、東京に「Tokyo Hub」を開設。日本市場への進出を目指す台湾発SUに対しPR、マーケティング、日本企業とのマッチングなどの支援を行い、

日本で開催される大型スタートアップ支援イベントSusHi Tech Tokyo 、IVS、「日本・台湾イノベーションサミット」(SIT主催、日台連携のスタートアップイベントとして最大規模)などへの出展・参加支援を通して台湾発SUの情報発信に注力している。今後も引き続き日台の企業、大学機関、学生起業者との交流を推進し、多角的な協力関係を構築していきたい。
プログラム終了後 交流会
プログラム終了後の交流会は、参加者同士の交流やネットワーキングで活気に満ち、盛会のうちに終了しました。会場内に設置した登壇企業・団体によるブースを通じ、活発な意見交換が促進されました。


会場内に設置した登壇企業・団体ブースでの展示(一部)

プログラム終了後の交流会
終了後のアンケート回答者全員から、本イベントについて、満足との回答をいただきました。特に会員ピッチでの課題解決に向けた取組み紹介に関して「思いを感じとれた」、「理解と関心が深まった」といったコメントが多く寄せられました。また、「社会課題解決に向けた企業同士の接点の場を今後も提供してほしい」「日本CDR協議会設立のようにビジネス化に向けた活動を実行できたことは素晴らしい」といったポジティブなご意見・ご感想をいただきました。
ICF推進オフィスでは、会員の皆さまとのコミュニティ活動を引続き強化していきます。社会課題解決に向けた具体的な共創活動が、ビジネス構想から社会実装事例の創出につながるよう、ぜひ積極的なご参加、ご提案をお待ちしております。
ICF会員限定で当日のアーカイブ動画をご案内しております。こちらからご覧ください。
本イベントに関するお問合わせ
三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ 担当:石田、水嶋
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp