株式会社三菱総合研究所

社会課題ディスカッションJune 16, 2021保険外の介護予防 報告

■開催概要
5月25日(火)15:30-17:30(Zoom開催) 参加者40名

■プログラム
(1)イントロダクション
 三菱総合研究所 未来共創本部 主任研究員 岡田圭太(司会)
(2)プレゼンテーション
◇NTTドコモ 5G・IoTビジネス部 ビジネスイノベーション推進担当 伊勢田良一様
 「気がつけば高齢者~3つのキーワード~」
◇ルネサンス アクティブライフ部 次長/ヘルスケアビジネス・アクセラレーター 近藤大祐様
 「『生涯活躍のまち』開発支援 のご案内」
◇Moff 取締役CFO兼B2M事業統括 土田泰広様
 「オンラインフレイル予防実証結果から考察するデジタル技術が保険外介護予防で果たせる役割」
◇ラテラ CEO荒磯慎也様、CTO荒磯恒久様(INCF BAP2020ファイナリスト)
 「無菌人工土壌“ArtGreenSoil”が創る保険外の介護予防」
(3)パネルディスカッション
(4)閉会後フリートーク

■イントロダクション・プレゼンテーション
冒頭、今回の社会課題ディスカッションの趣旨について司会より説明があった。

  • 2025年に公的介護に必要な費用は15.3兆円へ増加し、38万人の介護人材が不足
  • 一般財源による「公助」及び介護保険等の「共助」の仕組みだけでは、増加し続ける高齢者を支えることができない懸念がある
  • 要介護者の増加を押さえるうえで「介護予防」が重要な一方、「公助」「共助」には頼れず、セルフケアによる「自助」、住民ボランティアによる「互助」による方法を議論したい
図表 介護における共助・公助・自助・互助の考え方
出所:厚生労働省

続いて、現在「互助」の代表的なプログラムである「通いの場」について、人口と比べて十分な高齢者が参加しておらず、高齢者が通いたい場所になっていないのではないかと司会から問題提起。オーディエンスからも「楽しければ通う」という声はある一方で「自分自身はあまり通いたくない」「高齢者が一方的にサービスを受ける側にされている印象」との声が多数あり、高齢者が利用したくなる介護予防サービスの必要性について、参加者の認識統一が図られた。

その後、パネリストからのプレゼンでは、パネリストの4者から「保険外の介護予防」をテーマに、課題認識や取組内容について紹介していただいた。「介護予防」の有効性を高めるうえでのアプローチ方法のポイントは以下の通り。

  • ボランティアを始めとする社会参加が健康維持効果を高めることが実証されている。現役の頃から職場や家庭以外に通うサードプレイスを持っていれば、老後の生活でも支えにもなる。
  • 本人が得意なこと、仕事も含めた好きなことをできることが一番の介護予防になりそうだ。年を取ったから介護予防ではなく、高齢者になる前から楽しめる場・コミュニティが重要
  • 介護予防行動の継続性を高めることが重要。運動による健康増進効果の見える化に加え、オンラインでも同じユニフォームを着て一緒に運動をすることで仲間意識を醸成する等、いくつか方法がある
  • 高齢者の自己実現欲求を喚起することで介護予防に繋げたい。その上では自己実現に向けた敷居を下げ、高齢者が簡単に楽しめるサービスであることが求められる

■パネルディスカッション
続くパネルディスカッションでは、保険に頼らない介護予防ビジネスを設計していくうえでの論点について司会から頭出しをしつつ、パネリストを中心に、オーディエンスも交えた活発な議論が行われた。代表的なポイントは以下の通り。

介護予防サービスに求めることは世代によって異なる
人は人格形成期に触れたものの影響は大きく、サービス設計においても、当世代の若年期のカルチャー/サブカルチャーといった特徴を考慮する必要があるとの意見が多数出た。具体的には後期高齢者が迫る団塊世代は「努力すれば報われる」「教科書から学びたい」世代であるとの見解も出た。

ICTリテラシーによる壁をどう解消するか?
高齢者でも使いやすい介護予防サービス・製品を徹底的に作るべきという意見と共に、むしろ高齢者が分かる説明方法を追求するのが良いという意見も出た。
<具体例>
・高齢者にICTを利用してもらうには、デザイン思考が必要。高齢者がどこで引っかかるのかを丁寧に観察し、地道なトライアンドエラーでサービスを改良していく必要がある
・高齢者同士の方がお互い理解や共感をしやすい面がある。ICTリテラシーの高い高齢者が、比較的理解度の低い高齢者にサービス内容を説明する方法も有効ではないか

高齢者の得意なこと、好きなことを見つける機会が必要
高齢者自身が得意なことを、好きなことを見つけ出し、社会に提供できる場が必要ではないかとの意見や、その上での具体的な実現方法案が多く出た。
<具体例>
・世代間の交流機会を設け、高齢者が自分の好きな事・得意なことを若い世代に伝えられる機会が介護予防としても良い。若者・高齢者は双方で学べることも多いはず
・新たな学びやネットワーク作りの場として「古希式」を自治体主導で実施してはどうか
・定年後のキャリアデザインをいつから考えるべきか気にしている。考えを進める機会があると良い

■事務局メッセージ
パネリストからのプレゼンやその後の活発なディスカッションを通じ、事務局としても介護保険に頼らない介護予防のビジネスチャンスや、考慮すべきポイントについて多くの気づきを得た。当日は高齢者本人が支払うビジネスモデルが議論の中心となったが、例えば子供世代が親世代の代わりに支払うビジネスモデル等も考えられ、まだまだ多くの介護予防ビジネス案が考えられそうである。引き続き、本分野に関する示唆や知見をICFに集積し、「介護予防」に繋がる事業を皆さまと共創して参りたい。

※社会課題ディスカッションプログラムの概要は以下をご覧ください。
https://icf.mri.co.jp/activities/activities-361/

  • Twitter
  • Facebook