株式会社三菱総合研究所

総会・セミナーDecember 14, 2022開催報告:新しい資本主義における非財務情報~企業の成長を加速する「社会的インパクト」とは何か?~ 

昨今、企業のSDGs・ESG対応への要請の高まりとともに、新しい資本主義の中で財務的リターン以外の価値を創り出すことが注目されています。ICFでは従来より、「経済的リターン」と「社会的リターン」の両立を目指す新たな投資スタイル=インパクト投資に着目してきました。 

本年5月に開催したセミナーでは、主にベンチャー企業の資金調達を念頭に、インパクト投資における実際のステップ、投資家・ベンチャー企業双方の狙いや思惑、さらに今後に向けた課題認識などを扱いました(https://icf.mri.co.jp/activities/activities-7967/)。 

一方今回は、その続編として、主に上場企業を対象とした社会的インパクト情報の評価・活用・開示をテーマとして取り上げています。登壇者には、インパクト投資家(新生企業投資様)、ESG評価機関(サステイナリティクス様)、インパクト指標開示に先進的に取り組む上場企業(大和ハウス工業様)の3者をお招きし、それぞれ「インパクト投資の取り組み」、「ESGインテグレーション視点のインパクト指標」、「インパクト指標の活用に向けて~大和ハウスグループの創り出したい社会と私たちの役割~」と題したプレゼンテーションをいただきました。投資家、評価機関アナリスト、事業会社のそれぞれのお立場に基づくインパクト指標の捉え方やインパクト情報の開示(目的、活用方法)に関する考え方等、大変貴重なご意見を伺うことが出来ました。 

今回は後半にパネルディスカッションも実施し、全体通じて以下のような「社会的インパクト」に関する具体的課題や今後の可能性について活発な議論が繰り広げられました。 

【インパクト投資家】 

  • 企業のパーパス、ビジョン等とインパクトとが一貫していることが重要である 。
  • 実際のインパクト投資では、インパクト測定・マネジメント(IMM)を通じて非財務の事業価値をモニタリング/評価している。 

【ESG評価機関アナリスト】 

  • ESG投資の観点からは、一義的には社会的なインパクトが自社の経営・財務に及ぼす影響(=シングルマテリアリティ)との関連付けを重視している。 
  • ただし、今後は企業がもたらす、より広い環境・社会への影響(=ダブルマテリアリティ)を評価・管理する重要性が高まる可能性もあると考えている。 

【事業会社IR担当者】 

  • 非財務情報としての「社会的インパクト」情報は、近年、投資家が開示を求めるようになり、具体的な検討に着手した経緯がある。 
  • 上場企業にとって非財務情報の検討・整理・開示は、自社が取り組む“価値創造ストーリー”を投資家に効果的に伝える手段となり得る。 
  • また、従業員に対しても、インパクトを通じたパーパスの浸透が可能となるため、エンゲージメント向上等の効果も想定・期待される。 
  • 今後を考えると、上場企業ではインパクトの測定・管理を行うためのノウハウや人材不足が課題となってくるだろう。 

今回登壇者の皆さまから「インパクト」について異なる視点でお話をいただきましたが、根底にある「社会的価値を考慮した企業価値」を見える形にしていこうという点では、同じ考えに基づいているものだと再認識することができました。インパクトは将来も含めた会社の価値、社会への影響力を、定量データも用いつつ議論可能な形に置き換えることに他なりません。またインパクトを「企業価値・事業価値・社会への影響」とみれば、「会社の在り方=パーパス」を議論・整理・追求していくことにつながる取組だと言えそうです。 

なお、当日の参加者は約80名に上り、大手企業、ベンチャー企業、中央官庁、地方公共団体まで様々な方々にお集まりいただきました。改めて御礼申し上げます。本テーマにつきましては今後も継続検討予定ですので、引き続きご期待ください。 

開催概要

■日時
2022年11月21日(月) 13:30~15:00 (オンライン開催) 

■プログラム

  1. インパクト投資の概説と足元の潮流
    三菱総合研究所 サステナビリティ本部 主席研究員 阿由葉 真司
  2. インパクト投資の取り組み
    新生企業投資株式会社 シニアディレクター 高塚 清佳 氏
  3. ESGインテグレーション視点のインパクト指標
    サステナリティクス社 アソシエイトディレクター 竹林 正人 氏 
  4. インパクト指標の活用に向けて
    ~大和ハウスグループの創り出したい社会と私たちの役割~
    大和ハウス工業株式会社 IR室 チームリーダー 関 沙織 氏
  5. パネルディスカッション
    モデレーター:三菱総合研究所 経営イノベーション本部 主任研究員 杉下 寛樹 

本セミナーに関するお問合わせ

三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ 担当:水田
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp

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