株式会社テンアップ(現 リアルバーチャル株式会社)
代表取締役 金谷 建史 氏
特殊なゴーグルの必要性などから、利用者が限られていた印象のあるメタバースですが、株式会社テンアップでは一般の人も気軽に活用できるメタバース空間を徹底的に追究。クリック一つで入室でき、VRゴーグルも不要。個人の顔はアバターではなく、本人のリアルな映像で表現し、コミュニケーションの密度を大幅にアップさせた仮想空間を構築しました。 代表取締役 金谷建史氏にその大きな可能性について語っていただきます。
―テンアップさんは、我々ICFが主催する2017年のビジネスアクセラレーションプログラムで特別賞を受賞されています。それが現在のビジネスモデルの原型でいらっしゃるわけですよね。
そのとおりです。当時は「VRを見ているだけで偏差値が上がって、東大に入れたら嬉しいな」という、ある種夢のような話をしていました。まだまだ企画の段階だったのですが、早いものであれから5年。この間研究を重ねてきました。
―当初からご賛同くださる企業さんが多かったとか。
実は電通やキリンなど大手企業さまに、早い時期からご賛同いただくことができ、実証実験もずいぶん重ねてきました。子供たちの学びをメタバースによって「楽しく」、「学習の成果が高い」ものへと変えるため、学校見学や職業体験などさまざまなことを試してきたのです。
―すでに大きな成果を挙げていらっしゃるとうかがっています。
はい、近年当社のメタバースの授業によって「開成高校合格」や「難関大学進学」など、効果がどんどん形になってきています。WEB会議システムでのオンライン授業より楽しいと好評でもあります。
すべての学習は体験しながら学ぶ方が確実に身に付きますから、3D空間で勉強を進めることはとても効果的なのすね。低コストで実現可能な点も評価していただいています。
メタバースが「なんだか、おもしろそう」というだけでなく「確実に効果がある」ものなのだということを、ぜひみなさんに知っていただきたいと思っています。
―「確実に効果がある」。なるほど。ところで、社名の「テンアップ」ですが、現在ホームページには、“Trust Engage Notice Up”とありますが、確か当初は違いましたよね。
はい!実は点数アップのテンアップ!(笑)。本当は効果そのものをうたっている社名です。メタバースで模擬体験していただきながら、学力をつけようということで、実際みなさん点数アップしていただいて。学習以外にもいろいろな業界にご活用いただけるのではないかと、ここ2年はビジネス分野に応用できるよう、新しい研究を重ねています。
―メタバースやVR技術は現在非常に関心の高い分野になっていると思いますが、手ごたえを感じておられますか?
統計によると1000社のうち約4割の企業が「大変興味がある」と回答、その半数が今後1年以内に何らかのアクションを起こしたいと思っているとのこと。なかなか熱い分野なのですが、すぐ実行には移せないというのが現状です。
―実行に移せない理由は何なのでしょうか。
手元にVRゴーグルなどがない状態では、最初の糸口がわからず「まず何をしたらいいの?」。メタバースに入るプラットフォーム(動作環境)がいろいろ選べるのですが「どれで始めたらいいの?」。いざ決済という段になると「で、そもそも、どうやって活用するわけ?」。これらがメタバースが浸透しない理由の定番になっています。
―そこで解決のためいくつかの工夫をされたと。
まずVRゴーグルなど特殊な用具や環境を必要とせず、一般の方たちが簡単に試したり、始めたりすることを可能にしました。
またプラットフォーム(動作環境)のどれが一番適切かなどと、わざわざ考えなくてもご利用のWEBサイトのURLから簡単に入れるようにしています。
最後のいかに活用するかという部分は、けっこう難しいのですが、さまざまな事例を用いて一緒にメタバースの使い方を考えたり、過去事例を見たりしていくことで、その有効性を実感していただくようにしています。
また通常メタバース内では、アバターという自分の分身キャラクターをアニメーション的に表現して使うのですが、これでは誰が誰だかわからない。われわれはWEBカメラによってリアルな顔の映像を反映できるようにしています。それによって個人の識別はもちろん、表情によって理解度や満足度がわかりやすくなり、利用できる業種のイメージもぐんと広がりました。
―すでに建設業界、不動産業界などで、大きな成果が出ているとうかがいました。
これまで現場所長の育成に20年かかっていた建設業界は、当社の技術を使うことでなんと育成期間が1年に。通常一級建築士の資格を持っていても10年以上はかかるものなので、驚異的なスピードです。全国の建築現場から、施工ミスや日々の検討すべき課題を360度画像によって送ってもらい、新人の現場所長にメタバースを通じて3Dで体験してもらうのです。
これによってこれまで「経験を積むことでしか得られなかった知識」が超短期間で習得可能になったわけです。建設業界では現場所長の数が施工現場の数に繋がるわけですから、その育成は非常に大きな課題。そこに解決の糸口を付けた形です。
―不動産業界でも、契約に直結する問題を解決なさっていますね。
不動産業界では、オンライン接客にご活用いただいています。お客さまは落ち着いて、360度画像で実物を確認いただけますし、住居環境の細かい部分もアバターとして内部に入って見ていただけます。街並みなども居ながらにしてご覧になれるのです。現地に移動する時間がかからない分、平日に短時間のご見学が可能になります。
営業担当者にとっては、お客さまの興味の方向がわかるので、「次はお子さまとご一緒に」などとリピート営業に繋げやすくなります。土日のリアル見学も、予めポイントが絞れているので大変効率的です。現在「リアル見学」だけより「メタバース×現場のリアル見学」のほうが成約率が高い、といわれています。それならこれは「あり」だなと(笑)
―「あり」ですね。さらに新卒採用や、オンラインショップでも著しい効果があったとか。
新卒採用では弊社のシステムが、就職を控えた大学3年生のニーズにぴったりと合致したようです。商社などでは、3D画像でリアルに海外の支店を見せることができたり、工場ではそこに使われている機械まで見せることで理系の学生の心をつかんだり、さまざまな角度からメタバースは利用されています。
ある企業では採用サイトへのアクセス数が初日になんと前年の14.3倍 、2日目以降も前年を上回る高水準を維持しました。働き方をイメージできる疑似体験もできるので、閲覧時間も前年度の16倍に伸びています。その結果が多数の応募に繋がったようです。
オンラインショップでも「アクセス増、滞在時間増、しかもコスト削減」という高い成果がでています。
例えば鰻の販売をするとしますよね。通常皆さんがイメージするオンラインショッピングサイトは、ウナギの画像が出て、カートのアイコンがあって、という感じです。メタバースを使うと、360度画像で実際の浜松の風景や捕獲の様子、調理現場などを、シズル感たっぷりの楽しい映像として体感していただけます。しかもなんといってもサイトの制作コストが安いのが魅力です。
―今後メタバースは、様々なビジネスへの活用の可能性が期待できますね。
われわれもこのシステムのビジネス利用には、大きな可能性を感じています。例えば、ご高齢で身体を動かしにくくなった方が、メタバース内ではお孫さんと仲よく遊ぶことができるなど、ZOOMなど2Dの世界ではありえない、3Dならではの利用法がいろいろ考えられると思っています。
ぜひ我々の事業にご関心をもっていただき、意見交換させていただけたらなと思っています。お問い合わせいただきましたら、メタバースの中を一緒にご案内させていただきます。
社名:株式会社テンアップ(現 リアルバーチャル株式会社) |
創立:2016年10月 |
従業員数:10人 |
主な事業内容:近未来サービスの企画・開発・運営 URL:https://www.real-virtual.co.jp |
本稿は、ICF会員として、社会課題解決のために共に活動するベンチャー企業を紹介するシリーズ記事です。