株式会社三菱総合研究所

インパクト起業家ストーリーMarch 08, 2024#42 大手企業が次々と採用。女性のさまざまな健康問題に対応できるフェムテック福利厚生プラットフォーム『carefull』で、女性活躍推進のカルチャーを社内に醸成(株式会社nanoni)

株式会社nanoni 代表取締役 張 聖 氏

福利厚生の観点から女性の活躍を推進したいけれど、何から手をつければよいのか分からない。そのような企業でも各社に合った施策を提案してくれる、フェムテック福利厚生サービス『carefull』を手掛ける株式会社nanoni 代表取締役 張 聖 氏にお話を伺いました。

株式会社nanoni 代表取締役 張 聖 氏

―これまでのご経歴や起業のきっかけについて教えてください。

私は中国に生まれ、5歳から日本で暮らしています。日本の学校を出て、新卒でGoogle Japanに入りました。
入社後、健康診断の婦人科検診でひっかかったことをきっかけに、婦人科の疾患について調べてみました。すると、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)は、8割の女性が生涯のどこかで感染しているという話や、10人に1人ぐらいの割合で女性が罹患する多嚢胞卵巣症候群(PCOS)という病気にかかると妊娠しづらくなることがあるという話など、これまで知らなかった情報がたくさん出てきました。
しかし、これらの知識をもつ人は非常に少ないため、予防もできません。
また、もしこれらの病気にかかってしまったら、仕事を続ける上での不安も出てきます。「もっと早くに知っていれば、対処できたのに」そんな後悔をする場面をなくしていきたい。そのような思いから、女性の身を守るための情報と選択肢を提供するサービスを立ち上げました

―Google Japanでのご経験は、今のサービスの立ち上げに生かされていますか?

はい。非常に生かされています。
Google Japanでは、社員同士が「実は検査に引っかかって、今、こういう治療をしているの」とオープンに話せるカルチャーがありました。
このため、自分がいざ病に直面したとき、1人で抱え込まずにすぐ同僚に相談することができました。こうしたカルチャーこそが大切だということに、改めて気づかされました。
クライアント企業に対してセミナーを提供するだけでなく、カルチャーまで作ることができるか。ここが、真のダイバーシティ推進に繋がるポイントであり、サービスを提供していく上で、この点を強く意識しています。

―株式会社nanoniの事業内容について教えてください。

女性の健康課題をテクノロジーなどの力で解決する「フェムテック」分野において、事業を展開しています。
具体的には、女性の活躍をもっと推進したいと考えている企業に向けて、女性の健康領域に特化した研修や福利厚生のサービス『carefull』を提供しています。
『carefull』は、オンラインで学べる各種セミナーや、専門家の方に匿名で相談できるコミュニティ、オンライン診療や卵子凍結など、20以上のサービスを割引価格で提供する、福利厚生パッケージです。

―他社のサービスとの違いは、どのような点ですか?

ツールの提供だけでなく、女性活躍推進をしっかり進めたい企業向けに、コンサルティングや導入支援まで行っているところが、大きな特徴です。
社内の課題に合わせてセミナーのテーマやコンテンツをカスタマイズできるため、先ほどお話した企業カルチャーの醸成にも繋がります。
例えば、自動車メーカーで工場勤務の女性に向けて生理の悩みについてのセミナーを開催した際には、700名以上の方々に参加をいただきました。また、セミナーと福利厚生を組み合わせたプログラムを展開したときには、参加者のなかから健康課題が仕事への影響がほとんどない状態まで改善されたという成果も出ています。

私たちは、「プラットフォームを作っていく」という思想を持っています。さまざまな企業とお話しするなかで、フェムテックのサービスはたくさんあるけれど、それを選定するノウハウがない。あるいは、特定の健康課題に特化しているサービスだと、それ一つだけを入れたのでは不公平感が生じてしまう。そうではなく、従業員のあらゆる悩みを包括的にカバーしていきたい。そのような課題やニーズがあることを知りました。
そこで、20以上のフェムテックサービスと連携し、福利厚生パッケージを提供しています。その点が、他社サービスとは大きく異なる部分です。

―なぜ、女性の健康問題にフォーカスしているのでしょうか。

例えば、日本は、世界で一番体外受精の件数が多い国です。
しかし一方で、体外受精の成功率は、アメリカの2分の1。とても成績が悪い状況になっています。
この原因は、単純に「年齢」です。女性の生殖機能は、34~35歳を超えるとどんどん下がっていくと言われています。しかし、日本で体外受精を受ける方の平均年齢は40歳。年齢の高さが、体外受精の成功率を下げているわけです。
いかに早期から不妊治療を考えるきっかけを提供していくかが大切です。
また、治療を長く続けている方は心身ともに負担が大きいため、体外受精がうまくいかなかった場合に多様な選択肢が提供できるかどうかも、大きな課題です。
これは、個人のQOLという観点でも大切なことであり、また、不妊治療に保険が適用されるようになったため、国内の医療費を考える上でも重要な問題だといえます。
これらの課題を解決するために、女性の健康問題にフォーカスしたサービスを提供しています。

―女性の健康問題は、企業にとってどのように重要なのでしょうか?

女性の健康問題は、決して当事者だけが取り組むべきものではありません。企業の目線で見ても、非常に重要な課題です。
例えば、不妊治療については、通院にも大きな時間がかかります。不妊治療患者の5人に1人が、不妊治療と仕事との両立が難しく、離職をした経験をもっています。
また、女性は、年齢に応じてホルモンバランスが急激に変わるため、年齢によって直面する悩みが異なるという特徴があります。
例えば、20~30代の多くが生理痛に悩んでおり、それが労働生産性の低下に繋がっています。40~50代の管理職になるような年齢の方は、2人に1人が更年期障害に罹患すると言われています。仕事でミスが増えて周りに申し訳ないからと、昇進辞退を検討したことがある方が、40%もいるのです。
一方、企業の健康領域に対する取り組みについては、義務化されている健康診断やストレスチェックにとどまっているケースが多く、女性特有の健康課題については対策ができていないというのが実状です。

―今後の展望について、教えてください。

今年、フェムテックの活用が企業における人的資本経営にどのような影響を及ぼすのかというテーマで、東京大学と共同研究を行っています。大企業に関しては、健康経営の本丸というよりも、女性の健康活躍やダイバーシティ推進という期待から当社のサービスを導入いただくことが多くなっています。これらを踏まえて、今後は、実際の女性従業員の労働生産性向上につながる支援・サービスを提供していきます。
また、既に75万人の従業員の方にリーチできる状況になっており、中長期的には、例えば製薬会社と連携し、収集したデータを創薬研究に生かしていただくといったエコシステムの構築を目指しています。

社名:株式会社nanoni
創立:2020年5月
従業員数:20名(業務委託を含む)
主な事業内容:女性活躍推進クラウド「carefull」の開発・販売、女性活躍のコンサルティング・制度導入支援
URL:https://xxnanoni.com

本稿は、ICF会員として、社会課題解決のために共に活動するベンチャー企業を紹介するシリーズ記事です。

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