株式会社三菱総合研究所

未来共創プロジェクトAugust 21, 2025ICFロボット研究会 #2 ~テクノロジーの先駆者が描く未来社会~ Day1 開催レポート

2025年7月30、31日に、ICFロボット研究会の第2回イベントとして「テクノロジーの先駆者が描く未来社会」をテーマにしたイベントを開催しました。こちらは、Day1(農業)をまとめたレポートとなります。

※本イベントのアーカイブ動画はICF会員限定で配信をしております。こちらをご覧ください。

イベント内容

ICFロボット研究会#2 Day1(農業)では、ICF推進オフィスからのオープニングののち、豊橋市の桑原様と輝翠(きすい)株式会社の小林様にご登壇いただき、農業における人手不足の解決策となるロボットの可能性や、行政とベンチャー企業を含むエコシステム構築の可能性等についてご紹介いただきました。

ICFでは、2025年4月に「ICFロボット研究会」を立ち上げました。
本研究会では、ロボットのような先端技術の飛躍的な進化を考慮し、その不確実な未来予測に適したSF思考を活用することで、ロボットの新市場創造を目指します。特に「農業」や「施設管理」における深刻な人手不足と、サービス品質や働き手の意欲・やりがいの向上に貢献したいと考えています。
詳細は#1の開催レポートをご覧ください。

豊橋市の農業生産額は全国トップクラスを誇ります。日照条件がよく、農業に適した地理条件が揃っていることが、大きな要因です。収穫物の首都圏へのプロモーションや、海外(とくに東南アジア・グアム)への柿やトマトの輸出に積極的です。また道の駅とよはしを活用した地産地消も推進し、地元農家と連携したオリジナル商品の開発や収穫体験などのコンテンツ作りも行っています。

また、自動車産業が盛んな愛知県という土地柄と、豊橋技術科学大学の存在もあり、産学官連携による研究開発が盛んで、大学の研究シーズの社会実装にも力を入れています。半導体を核とした次世代産業振興を進めており、同大学が設立した次世代半導体・センサ科学研究所との連携もすすめています。なお、同大学のロボコン同好会がNHK学生ロボコンで史上初の3連覇を達成するなど、ロボット研究も盛んです。

農業を取り巻く課題である、高齢化や担い手不足に対して、ロボットを含む農業テクノロジー(アグリテック)を用いたビジネスによる解決を支援するため、TOYOHASHI AGRI MEETUPに取り組んでいます。専用のウェブサイト上では、農家の顔と名前を公開し、困りごとを可視化していることが大きな特徴です。また困りごとに対する解決策の収集として、アグリテックコンテストをこれまで3回開催しており、9つの実証実験プロジェクトが組成されました。輝翠様も同コンテスト表彰企業であり、継続して伴走支援を行っています。

輝翠株式会社は、東北大学を修了した創業者が立ち上げたアグリテック・スタートアップで、創業して4期目です。本社は、東北大学のインキュベーションセンターの中に置いていますが、千葉の柏の葉を実質的な本拠地として、プロダクトやサービスの開発・製造・販売の展開をしています。メンバーは16カ国のエンジニアとビジネスサイドも含め17人のメンバーという体制です。

プロダクトとしては、電動AGV農業ロボットを開発し、300kg積載可能モデルをリリース、さらに100kg積載モデルを開発中です。Bluetoothによる遠隔操作やカメラでの追従機能を持ち、将来的には自律走行や複数台運用による農業の無人化を目指しています。草刈りや農薬散布など従来ガソリン式機械で行われていた作業を電動化し、また、アタッチメントを活用して多機能化することで、農業経営の効率化と身体的負荷の軽減を実現しようとしています。

国内での実証を進めつつ、海外からも問い合わせが寄せられており、世界市場への展開も視野に入れています。豊橋市や千葉、青森などで農家への納品・フォローを行い、現場のフィードバックを製品改善に反映。特に女性や高齢者にも使いやすい設計を重視し、色や操作性にも配慮した開発を進めています。また、行政との連携により、補助金活用や地域パートナーシップを通じて導入しやすい環境を整えています。

輝翠株式会社は今後、製品版のロボットを全国に展開し、デジタルプラットフォームによるデータ活用を視野に入れています。農業ロボットを単なる機械ではなく、経営に寄り添う技術として進化させ、持続可能な農業と地域経済の発展に貢献することを目指しています。最終的には、世界レベルで優位性のあるサービスを構築し、日本の社会課題解決に貢献しつつ、国際的なアグリテック市場での成長を図ります。

【徹底したニーズ対応:ロボットのあるべき姿】

  • 従来は農業ロボットに対して恐怖心を抱いていたパート社員のかたが、輝翠株式会社のロボット(騒音が小さく、親近感が湧く色合い)に対しては、非常に友好的でした。
  • 輝翠株式会社の創業者であるタミル氏は、人に寄り添うテクノロジーの実現を重視し、農家との対話を通じて、製品にニーズを反映しており、安全性や品質に妥協せず、ビジネスチームとエンジニアチームが徹底的に議論しながら開発を進めています。

【徹底したニーズ対応:ロボットを開発した理由】

  • 輝翠株式会社は、当初AIやソフトウェア技術から取得したデータを活用したプラットフォームの提供を想定していましたが、農家の現場ニーズに応える有用なハードウェア(ロボット)がなかったために、ハードウエア開発にも踏み込みました。
  • データ活用と身体的支援の両面で価値を提供する理想像を掲げ、徹底したニーズ対応を進めています。

【現場ニーズを聞き出すことの重要性】

  • 特に農業の場合、ロボットを使うユーザーは、普段先進技術に触れていないかたが多いです。そのようなかたにロボットを使っていただくには、現場の声を中長期的に聞き続け、企業や個人として信頼していただいたうえで、細かなニーズを聞き出し(例えば、ロボットの高さを数cmだけ下げることができればロボットを導入することができる、というニーズ)、そのニーズにあったソリューションとしてロボットを提供する必要があります。

【ロボットと経営の関係】

  • 輝翠株式会社は、ロボットから取得可能なデータを活用して、農家の経営を管理できるようなプラットフォームを提供しています。技術導入の目的は、作業効率化の先にある、収益性や経営効率を向上させることにあります。

【農業を取り巻くステークホルダーとその役割】

  • 農業を取り巻くステークホルダーとして、農家はもちろんのこと、課題に対するソリューションを提供するスタートアップや、それらの橋渡しをする自治体が考えられます。今後、大規模なエコシステムを構築するには、大企業を巻き込むことや、それらのステークホルダーを結びつけるアクセラレータの存在も重要です。

プログラム

12:00 – 12:05オープニング
12:05 – 12:20取組紹介
(豊橋市 桑原 裕明 氏)    
12:20 – 12:35取組紹介
(輝翠(きすい)株式会社 小林 輝之 氏)
12:35 – 12:55フリーディスカッション・質疑応答
12:55 – 13:00クロージング

本イベントに関するお問い合わせ

三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ推進オフィス 担当:山田・水嶋
E-mail: icf-inq@ml.mri.co.jp

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