株式会社Will Smart 代表取締役社長 石井 康弘 氏
空港やバスターミナルに設置されているデジタルサイネージ、情報を表示するただのモニターだと思うかもしれません。しかし、案内板としてのハードウェアだけでなく、そこに表示されるリアルタイムな運行状況のデータ取得まで、このデジタルサイネージが担っています。空港やバスターミナル、商業施設にこのようなデジタルサイネージを提供しているのが、株式会社Will Smartです。デジタル技術を駆使して、交通、街づくり、モビリティといったインフラを支えている株式会社Will Smart の代表取締役社長 石井康弘氏にお話を伺いました。
―株式会社Will Smart について教えてください。
Will Smartは、 IoTのソリューションを提供している会社です。「自らのアイディアとテクノロジーを活用し社会課題を解決する」というミッションに基づき、社会インフラを支えるお客様の課題解決に取り組んでいます。
弊社のお客様には、地方や地域の公共交通、街づくり、エネルギー分野など、インフラに関わる機関や企業が多くいらっしゃいます。
このようなお客様の課題解決を通じて、社会が抱える課題の解決にも寄与したいと思っています。
―どのような経緯で創業されたのでしょうか?
もともとは、株式会社ゼンリンデータコムの社内ベンチャーとして起業しました。
Will Smartが立ち上がってから、ちょうど10年経ったところです。
私はゼンリンデータコムに入社後、新サービスを考えるサービス企画部という部署に所属していました。そこに、Will Smartの元となる事業アイディアがあり、上司から「できれば新規の事業として会社を立ち上げたい」という話をされたのです。
前職で事業計画を作ったことがあったため、事業計画書の作成を申し出たのが、Will Smart事業に関わるきっかけでした。
ゼンリンは、ご承知の通り、地図を作っている会社です。そして、ゼンリンデータコムでは、地図のインターネット配信を行っています。
ちょうど当時は、多言語の地図データを活用してインバウンドの集客が増えている時期でした。このため、「インバウンド向けに地図を提供し、かつそれをデジタルサイネージに投影しよう」といったアイディアがあったのです。
そのアイディアについて事業計画を作り、2度目のプレゼンでなんとか承認までこぎつけることができました。
―社内ベンチャーという形をとったのには、何か理由があるのですか?
この事業は、社内で展開することも可能でした。会社の持つ強みを活用できるのであれば、社内で展開するべきです。
しかし当時、多言語の地図を扱うことはありましたが、肝心なデジタルサイネージの部分、ハードウェアの取り扱いについて、ゼンリングループでは経験がありませんでした。
このような初めてのチャレンジとなる分野に関しては、社内にリソースがあるわけでもないし、適切な人材がいるわけでもない。
「それなら、会社として分けてしまったほうがいい」そう考えました。これには、会社を分けることによって、退路を絶つという意味もあります。
また、自分としても、紐付きで新規事業に取り組むことに抵抗を感じている部分もありました。そこで、会社立ち上げと同時に転籍し、取締役に就任しました。2016年に代表になり、現在に至ります。
―主な事業内容について教えてください。
サイネージの事業を行いながら、鉄道などのインフラにも取り組んでいます。
また、WEBシステムの開発は立ち上げ当初から提供しており、得意分野です。
あと、AIシステム、データサイエンス、モビリティにも力を入れています。
―それぞれの事業について、具体的にはどのようなサービスを提供されているのでしょうか?
デジタルサイネージ事業では、空港や大型バスターミナルにサイネージを提供しています。サイネージだけでなく、そこに映される運行表示のシステムも作っています。つまり、WEBシステムを開発しながら、表示媒体としてサイネージを提供しているのです。
これらのデジタルサイネージは、すべてインターネットに繋がっています。サイネージはパソコンに接続されており、そのパソコンを通して、今どのようなコンテンツが流れているのかが把握できるようになっています。また、不具合が発生した際には、リモートで再起動をかけることもできます。
全て、まさにIoTの技術です。さまざまな地域にあるデバイスをリモートでコントロールする仕組みが、既に動いています。
モビリティについては、EVの普及に向けて、多くの企業がEVを活用したサービスを検討しています。
EVは、バッテリーの状態をリアルタイムで把握することが重要です。バッテリー残量だけでなく、利用回数や、どれだけ充電に時間がかかるか、といった使用状態の可視化が大切なポイント。
EVとスマートフォンは似たところがあり、バッテリーの状態が残存価値に大きな影響を与えます。つまり、バッテリーの価値が、中古品としての価値を表すわけです。
EVの健康状態をリアルタイムに把握できる仕組みを、我々は作っています。
この技術に関しては、最近、お問い合わせが急増しているところです。
他にも、カーシェアリングのパッケージシステム『Will-MoBi(ウィルモビ)』を展開しています。
『Will-MoBi』は、これさえ使えばすぐにでもカーシェア事業を始めることができる、というオールインワンのプラットフォームです。
車に通信型のパソコンを設置し、そこからリアルタイムで車の状態をモニタリングします。ガソリンの残量や位置情報、ドアの開閉状況など、さまざまなパラメータがあります。そういったあらゆるデータを取得し、サーバーに送ると同時に、サーバーからは予約した人だけが鍵を開けられるように、指示を出します。このような、車とクラウドサーバーがデータをやりとりしているプラットフォームです。
さらに、一般のユーザー向けに、予約決済ができるアプリなども提供しており、それらをオールインワンで提供しています。
『Will-MoBi』は、伊藤忠エネクス様にご採用いただいており、『Will-MoBi』を下地にENEOS様のカーシェアシステムをフルスクラッチで作っています。
また、AIの画像認識技術を使って、現場に置いてあるカメラにパソコンを接続しリアルタイムにカメラ画像を解析、特定の行為を発見するとか、人をカウントするといったソリューションも作っています。
最近は、たくさんのデータがサーバーに送られてくるため、データを分析するデータサイエンスの事業にも広げています。
―御社の一番のセールスポイントは、どのような点でしょうか?
我々が一番こだわっているのは、「実現する」というところです。
テック系のベンチャーの多くが、コンセプト止まりになっていしまっているという現実があります。
弊社では、羽田空港だけでなく、東京八重洲のミッドタウン下にある日本最大のバスターミナルのシステム運営も任されています。
社会に実装し、24時間365日稼働させているという事実、実績があるのです。
実装レベルで運用まで行っていることが、我々の大きな強みだと思っています。
社名:株式会社Will Smart |
創立:2012年12月 |
主な事業内容:ITソリューション事業(デジタルディスプレイ・配信)/IoT共創事業/ モビリティシステム事業 URL:https://willsmart.co.jp |
本稿は、ICF会員として、社会課題解決のために共に活動するベンチャー企業を紹介するシリーズ記事です。