株式会社Next Relation 代表取締役CEO 小野寺 浩太 氏
これまでにない新しい商品やサービスを普及させたいが、法制度の壁がある。行政と連携することで事業機会を拡大したい。政策動向を取り入れた事業戦略で成長性を表現したい等の経営課題に対して、パブリックアフェアーズでビジネスを加速させるサポートサービス『フェアーズ』を提供する株式会社Next Relation 代表取締役CEO 小野寺浩太氏にお話を伺いました。
―株式会社 Next Relationについて教えてください。
株式会社 Next Relationは、「パブリックアフェアーズでビジネスを加速」を合言葉に、『フェアーズ』というサービスを展開しております。
パブリックアフェアーズを通じて、イノベーションの社会実装を促し、社会課題の解決に挑む企業へのサポートを提供しています。
―パブリックアフェアーズとは、どういう意味ですか?
我々は、パブリックアフェアーズを「公共分野との戦略的コミュニケーションを通じて、企業と社会の持続的成長を実現するための経営手法」と定義しています。
聞き馴染みのある言葉でいうと「ロビイング」が近い概念になります。日本ではロビイングというと、癒着や天下りといったネガティブな連想をされてしまいがちですが、パブリックアフェアーズでは政府や公共機関への働きかけであるガバメントリレーションズに加え、世論を喚起し雰囲気を醸成するパブリックリレーションズの概念も包括しています。
イノベーションの社会実装を実現するための切り口として、パブリックアフェアーズが位置づけられているのです。
―パブリックアフェアーズには、どのような利点があるのですか?
「ニューノーマル時代」と言われるようになって久しいですが、変化の激しい時代が到来し、これまでになかった新たな課題が出てきています。
例えば、海外ではうまくいったビジネスモデルであっても、日本ではアナログな規制が障壁となって社会実装できないケース。
あるいは、現在23兆円とも言われているBtoG市場(Business to Government:行政・国とのビジネス)。さまざまな地域課題や行政サービスにおいてアウトソーシングが始まっており、これまで政府や行政に向けた事業を展開してこなかった企業が、新たに取り組むようになってきました。しかし、民間と行政とでは手続きや手順などが異なり、コミュニケーションに苦戦しています。
また、国策という切り口から、自社のコアバリューを国が推進する政策=国策に寄せ事業ドメインの再構築と新たなKPIを策定することで、企業価値の向上に繋がります。
このようなニューノーマル時代特有の経営課題について、パブリックアフェアーズという切り口で解決ができると、我々は考えております。
―パブリックアフェアーズのサービスを提供するに至った経緯について、教えてください。
大学生のとき、議員秘書のインターンをしていました。もともと政治に興味があり、「政策決定の現場を見てみたい」という思いが強かったのです。
卒業後、金融機関勤務を経て改めて国会議員の秘書となりました。
国会議員秘書をしていた頃、「このようなサービスを社会実装したいけれど、アナログな規制が障壁となっている」と、スタートアップ企業から多くのご相談を受けていました。
ほとんどの規制が、スマートフォンやDXのような概念が登場する前に作られたもの。それらが果たして今の時代に即しているのか……と疑問を感じるようになりました。
とはいえ、単純に規制緩和すればいいということではありません。安心や安全、顧客保護など、さまざまな観点、論点が存在します。
日々、新たなテクノロジーが生まれる中で、これらをしっかり社会実装できる仕組みを作っていきたい。そう思いました。
アメリカでは、このような活動は、ロビイストという職業として成立しており、政策決定者側と現場との調整機能を果たしています。しかし、日本では、まだその機能が確立していません。
だとしたら、日本版のロビイストとして、その役目を果たしていこう。そう思ったのが、起業のきっかけでした。
―日本のパブリックアフェアーズは、どのくらい遅れているのでしょうか?
パブリックアフェアーズのアメリカにおける市場規模4300億円に対し、日本の市場規模は130億円、実に30倍以上もの差が開いています。
パブリックアフェアーズへの注力は、「世界の時価総額ランキングと無関係ではない」と言われています。1989年、トップ50社のうち実に32社を日本企業が占めていました。それが今では、トヨタ1社のみ。そして、ランキング上位の多くはIT・通信へと変化しています。
いかにアナログ規制を撤廃してイノベーションを社会実装してきたか、新市場を創出してきたかが、ランキングへと顕著に反映されているのです。
―日本で今後、パブリックアフェアーズは浸透するのでしょうか?
2022年に、経済産業省がパブリックアフェアーズに相当する活動を「新市場創出サービス」と定義して、産業マップを公開しました。今後の発展は、大いに見込まれます。
この産業マップの中で、パブリックアフェアーズに取り組む意義が、数字で示されています。新たな市場創出を目的としてルール形成に取り組んでいる企業の売上高年平均成長率(CAGR)は、平均的な日本企業と比べて5倍程度になっているというのです。
我々は、日本におけるパブリックアフェアーズの活動はまだ黎明期だ、と捉えております。
日本では、ロビイングを担える人材は、多くはいません。現段階では、アウトソーシングを利用することが合理的だと言えるでしょう。
今後、我々のようなロビイングを専門として公共政策部門をサポートする企業が徐々に増えていき、パブリックアフェアーズが日本のビジネスに浸透していくものと思われます。
―株式会社 Next Relationでは、具体的には、どのような支援をされているのですか?
企業価値の向上と持続的成長について、パブリックアフェアーズの観点から、「ルールメイキング」「公共渉外」「パブリックアフェアーズ戦略ストーリー策定」の3本柱で支援をしています。
1つ目の「ルールメイキング」では、例えば、ターゲットとしている法律や規制の緩和、あるいは、予算化を目的として、「1社の声から業界や世論の声に変える」活動を支援します。業界団体の設立や運営、そして政策提言といったところまで、一気通貫でサポート可能です。
2つ目の「公共渉外」については、官民連携による事業機会の拡大を目的として、自治体への営業活動やイベントにおける後援獲得、包括連携協定や実証実験の実施といった、あらゆるBtoGコミュニケーションをサポートしています。
3つ目の「パブリックアフェアーズ戦略ストーリー策定」では、国策に沿うような企業のIR、PR活動などを行います。政権の重要課題や翌年度予算編成の方向性を示す方針、いわゆる骨太の方針が、毎年6月に発表されます。一例として、翌年度予算の指針に寄せた事業を展開することが、今後の成長性の表現、企業価値向上に有用です。
―従来の企業成長戦略との違いはどのような点ですか?
これまでの成長戦略は、同じ市場の中でパイをどれだけ取っていけるか、という考え方でした。しかし、パブリックアフェアーズを用いると、外部環境自体を構築することが可能になります。つまり、新たな市場を切り開き、事業領域を拡大することができるのです。まさに、自らがTAM(Total Addressable Market、獲得しうる最大市場規模、商品・サービスの総需要)を拡大するプレイヤーとなることができる。そのための支援を、Next Relationでは提供しています。
―今後の取り組みについて教えてください。
政策情報を整理するプラットフォームをご提供すべく、現在取り組んでいます。
日本では、予算の情報や補助金の情報、何年後に何の法律が変わるのかなど、各省庁のさまざまな情報が、しっかりと公開されています。しかし、その情報にたどり着くまでが難しい。階層が深すぎるとか、フォーマットが省庁ごとバラバラで統一されていないなど。そういった点について、情報プラットフォームとして整理してご提供できるようなシステムを、今まさに開発中です。
この情報プラットフォームを、金融機関やコンサルティングファームだけでなく、各企業の経営企画室のような部署でご利用いただきたい。そして、外部環境を変えていくためのチャレンジをご支援していきたいと考えております。
社名:株式会社Next Relation |
創立:2022年8月 |
従業員数:15名 |
主な事業内容:パブリックアフェアーズ事業 URL:https://corp.next-relation.jp |
本稿は、ICF会員として、社会課題解決のために共に活動するベンチャー企業を紹介するシリーズ記事です。