株式会社三菱総合研究所

インパクト起業家ストーリーApril 01, 2021#4 子どもを願うすべての人に寄り添い、幸せな人生を歩める社会をつくる(株式会社ファミワン)

株式会社ファミワン 代表取締役 石川 勇介 氏

(注)旧INCF サイトにて2020年6月に発信した記事を再掲しています。

妊活経験者でもあるご自身の体験に基づき、妊活に関する正しい情報を適切なアドバイスと共に届けている株式会社ファミワン 代表取締役 石川 勇介 氏にお話を伺いました。

―起業のきっかけについて教えてください。

石川:私自身が妊活を経験したことです。妊活を始めた際には、妊活について全く詳しくありませんでしたが、当時医療IT系の企業に在籍していたため、エビデンスの有無などを調べて検討することが出来ました。一方、私の妻や、今後妊活に直面する方の多くは、「世の中には多くの情報が溢れているが、どの情報が正確な情報か判断できない」、「自分にあった適切なアドバイスを受けるには、どこに相談すればよいかわからない」などの課題が存在することに気付きました。そこで、私達夫婦が妊活に成功したとしても、今後妊活に取り組む全ての人々が同じ課題に直面してしまわないようサポートする仕組みを構築しようと起業を決意しました。

株式会社ファミワン
代表取締役 石川 勇介 氏

―妊活をサポートするために具体的にはどのようなサービスを提供されていますか?

石川:「LINE」を活用した妊活コンシェルジュサービス「famione」を提供しています。不妊症看護認定看護師や臨床心理士などで構成される専門家チームが「LINE」上で、個人の悩みに寄り添った情報提供やアドバイスを行います。気軽に利用しやすい「LINE」を活用することでユーザーのハードルを下げ、不妊に悩んでから登録するのではなく、妊活に少しでも興味をもった時点で、気軽に登録して、あとは受け身でいても正確な情報が届くという状況を作れるよう意識しています。

現在、約2万人弱の登録ユーザーがいる「famione」ですが、妊活対象カップルは600万組~1000万組と試算されており、リーチできているのはごく一部にすぎません。引き続き登録ユーザーの獲得にも力を入れていきたいです。また、人々にとって妊活が当たり前な世界になるために、啓蒙活動にも力を入れています。テレビドラマの監修をしたのもその一環です。企業の福利厚生サービスでは、管理職向けのセミナーも実施し、妊活を支える・見守る側のリテラシー向上にも力を入れています。

社名:株式会社ファミワン
創立:2015年6月1日
従業員数:30名(業務委託含む)
主な事業内容:妊活コンシェルジュサービス「famione(ファミワン)」の運営及び各種コンサルティング

―目指しているゴールと現在の手ごたえはいかがでしょうか?

全ての人々に妊活の基礎知識を知って頂きたいと思っています。妊活、不妊は決して特別なものではなく、人々が気軽に相談しあえるような社会が理想です。一方で、全ての人々に共通する「妊活の成功モデル」は存在しないと思っています。個人ごとに異なる妊活の意識に対して、どのようなサポートやサービスが適切なのかという視点を重視し、ユーザーに真摯に向き合うしかありません。これまでの提供を通じて専門家チームのアドバイス結果に関するフィードバックが溜まってきているので、最適なアドバイスのパターン化の構築が可能となり、効率性・有効性が向上しています。東京大学での臨床研究なども実施し、サービスの精度を向上させています。

―コロナ禍における状況の変化や新たに取り組まれたことはありますか?

石川:コロナ禍では、妊婦や胎児への影響が分からない点から、日本生殖医学会も不妊治療延期に関する声明があり、不妊治療が不要不急とみなされるかといった議論も起こるなど、大きな環境変化が起きました。ファミワンとしては、ユーザーの不安を解消するために、専門家チームによる心のサポートや、東日本大震災の際に妊活を経験した当事者による体験談の共有など、妊活中の人が一人で悩まないように寄り添うことを心掛けています。2020年3月下旬、コロナ対策として、通常有料である専門家への自由相談サービスの無料提供を始めましたが、1週間のユーザー登録者数が8倍~9倍に伸びました。既に通院中の方の新規登録も多かったことから、我々の専門家チームによる無料相談がコロナ禍における救済を少しは果たせたと思っています。

遠隔インタビューの様子(石川 氏)

―従来の価値観との対立等、苦労される点はありませんか?

石川:妊活そのものを理解し、課題を認識してもらうためには、啓蒙活動、その先にあるユーザーの行動変容をもたらす具体的なサービスが不可欠です。医療機関や自治体、企業など、様々なターゲットに対して、PDCAをまわしながら着実にサービスを普及していくようにしています。例えば神奈川県横須賀市との妊活サポート事業としての提供が始まりましたが、それを契機に全国に裾野を広げていきたいと考えています。

妊活中の人々の究極のニーズは、「妊娠すること」です。しかし、絶対妊娠できるサービスを提供することは困難です。そこで個人のニーズに親身に寄り添い、適切なアドバイスを提供することを通して、顧客価値や満足度向上に努めています。

―今後の期待・抱負を教えてください。

妊活の領域については、サービス設計、行動変容仮説など一定の成果が見えてきました。今後は、早期啓発や妊娠や出産、育児の領域にもサポートを拡大していきたいと思っています。また、海外進出も視野に入れています。とりわけ欧米については、日本同様に未だ古く間違った情報も浸透しているのでマーケットとしての可能性は十分にあります。事業のスケールアップを見える化することで賛同者を増やしながら、着実に事業展開をしていきたいと思っています。

MRI’s EYE
新型コロナ禍のリスクはまだ見ぬ新たな命にも及んでいます。その中で、徹底的にユーザーに寄り添うことを通じた価値提供は大きな反響を生んでいます。引き続き、新たな生活様式の中での事業加速が期待されます。

本稿は、INCF会員として、社会課題解決のために共に活動するベンチャー企業を紹介するシリーズ記事です。

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