株式会社三菱総合研究所

インパクト起業家ストーリーJune 21, 2022#15 市民が積極的に行政へ参加する「新しい公共」を目指して。「じっくり話して、しっかり決める」参加型合意形成プラットフォーム『Liqlid』(株式会社Liquitous)

株式会社Liquitous 代表取締役 栗本 拓幸 氏

「声をあげても、どうせ行政には届かない」このような諦めムードが蔓延し、多くの市民が政治や行政にあまり関わりを持とうとしません。行政と市民の橋渡しをすべく、市民参加のルートをテクノロジーによって提供している株式会社Liquitousの代表取締役 栗本拓幸(くりもと ひろゆき)氏にお話を伺いました。

株式会社Liquitous
代表取締役 栗本 拓幸 氏

―株式会社Liquitousの事業内容を教えてください。

オンラインの参加合意形成プラットフォームを開発しています。
これは、議題のテーマに応じて市民と行政職員がコラボレーションしながらアイデアを出し、文章を作るためのものです。行政職と市民の目線を合わせることができる新しい市民参加の仕組みとして、自治体での実証、事業への導入を、今まさに進めています。

―具体的にはどのようなプロダクトがあるのでしょうか?

「じっくり話して、しっかり決める」をコンセプトとする、参加型合意形成プラットフォーム『Liqlid』があります。

合意形成の流れは、まず、議論のテーマ別にアイデアを出します。次に、出てきたアイデアを元にプロジェクトを立ち上げます。そして、チャットを通して議論し、修正の提案をします。最後に、投票をして結果を出します。このような一連の流れを一気通貫に実施できるプラットフォーム、それが『Liqlid』です。

弊社では、このプラットフォームを単独で運用することは考えておりません。例えばオフラインのワークショップと融合する。あるいは、リビングラボのような仕組みと、合意形成のプラットフォームとを有機的に連携させる。

また、これはあくまでも将来的な展開になりますが、例えば役所内での委員会の審査などに市民が参加するといった形でも使えるのではないかと考えています。

出所:株式会社Liquitous

―どのような自治体でどのように導入されているのですか?

今現在では、約20の自治体、そして民間企業2社とやり取りしております。

テーマはさまざまです。例えば埼玉県横瀬町においては、「町有地の利活用の方法について、町民の皆さんとコミュニケーションをとりたい」という目的でプロジェクトを進めています。

また、高知県土佐町からは、「住民の中でも、UターンやIターンを経験または検討している世帯とコミュニケーションを取るために使いたい」というご要望をいただいています。土佐町の場合、SDGs未来都市に選定されていることもあり、SDGs推進の観点も含めた取り組みにすべく、検討を進めているところです。

また、東京都府中市では、公共施設の統廃合を前提に、公共施設のあり方を見直す過程において、市民の皆さまからご意見をいただくツールとして活用されています。

奈良県生駒市においては、これからスマートシティ(※1)計画を策定していくなかで、市民対話を行う仕組みとして。最近、メタバースやデジタルツイン(※2)などが話題になっていますが、その辺りと連携した取り組みをしたいとのお話をいただいています。

他にも多くの自治体から、問い合わせをいただいています。中には、スーパーシティ構想(※3)における住民合意形成をしたいといったお話もあります。さらには、国内のインフラをODA(政府開発援助)として海外に供与する際に、現地の住民の皆さんからご意見を集めるツールとして使いたいといったお話もでています。

―費用としては、どのぐらいなのでしょうか?

随意契約なのか、公募プロポーザルなのか、どのような予算で実施するのかによって変わります。また、自治体規模によっても変わってきますが、基本的には町村、一般市、中核市、政令市、都道府県によって、料金設定を変えています。とはいえ、随意契約の上限金額など、さまざまな事情もありますので、そこについては、ご相談に乗っています。

―ご高齢の方など、テクノロジーについていけず、参加できずにこぼれ落ちてしまうことはありませんか?

デジタルデバイドの問題については、我々も非常に重要視しています。もちろん、ソフトウェアの使いやすさを意識して開発していますが、それでも、なかなかテクノロジーに適応できない方がいるのも事実です。

弊社のご提案は、『Liqlid』で全てを代替するということではありません。例えば、既存のパブリックコメントや対面での議論が良いという方がいるなら、それを残し、共存すればいいと思っています。今の仕組みでは参加しづらいと感じている方に対して、「新しい回路がありますよ」とご提案をしているところです。

例えば、住民説明会を行い、その上で『Liqlid』も利用する。そのような形での活用を見込んでいます。

―今後の展望をお聞かせください。

『Liqlid』の普及を通して、巷間で言われているような、「行政は市民の声なんて聞いてくれない」といった偏見を拭い去っていきたい。市民の皆さんがより積極的に参加する、新しい公共を作っていきたいと考えています。

※1「スマートシティ」…デジタル技術を活用することで都市インフラ・施設や運営業務等を最適化し、都市や地域の抱える課題を解決する持続可能な都市。住民や地域企業の利便性および快適性の向上を目指す都市。
※2「デジタルツイン」…現実の世界から収集したデータをコンピュータ上で再現する技術。膨大なデータを元に、現実に近いシミュレーションが可能となる。
※3「スーパーシティ構想」…医療や交通、教育、行政手続などの生活に関わる分野において、AIなどを活用し、地域の課題解決や活性化を目指す構想。

社名:株式会社Liquitous
創立:2020年2月
従業員数:14名(取締役・業務委託・インターン含む)
主な事業内容:ソフトウェア開発事業、政策研究事業、政策企画事業
URL:https://liquitous.com

本稿は、ICF会員として、社会課題解決のために共に活動するベンチャー企業を紹介するシリーズ記事です。

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