株式会社三菱総合研究所

インパクト起業家ストーリーOctober 11, 2022#22 困ったときに支え合えるご近所さんは何人? 人々が支え合える街を”地域コミュニティアプリ”で創る(PIAZZA株式会社)

PIAZZA株式会社 代表取締役 CEO 矢野 晃平 氏

子どもが事故にあってしまい、看病・育児・仕事で肉体的にも精神的にもまいっていたときに心配して声をかけてくれたのが”ご近所さん”だった。この体験をきっかけに地域コミュニティアプリ「PIAZZA(ピアッザ)」を立ち上げた矢野晃平氏(PIAZZA株式会社の代表取締役)に話を伺いました。

―地域コミュニティアプリ「PIAZZA(ピアッザ)」(以下、「ピアッザ」)とは、どのようなものですか?

PIAZZA株式会社 代表取締役 CEO
矢野 晃平 氏

街の広場をデジタル上で作ったものです。利用者の30、40代が7割くらい、いわゆるアクティブファミリー層がメインユーザーです。最初に普及したのは、子どもが0歳から3歳ぐらいまでのお母さんで、ローカルの情報源として入ってくれています。

私の子どもが事故にあったときに心配して声をかけてくれたのが名前も知らないご近所さんで、「こんなにITが発達しているのに地域や近所のことを知らないのはなぜだろう」と思い、これを現代風に解決する手段として考えました。コロナの影響もあり、男性やシニアの利用も増えています。

―どのように使われているのですか?

出所:PIAZZA株式会社

たとえば、あるPIAZZAユーザーの方が「自転車が盗難された」とアプリに投稿し、近所の別のユーザーの方が見つけてくれて解決した例があります。TwitterやFacebookではなかなか起きにくいような、ハイパーローカルなコミュニケーションが生まれています。

特にここ1年で伸びてきているのは「お譲りします」の投稿です。ベビーカー、家具をはじめ、メダカやサイズアウトしたおむつなど、「メルカリに出しにくいけど、地域だから譲りたい」というニーズがあるようです。

調査(※1)によると「ご近所付き合いが盛んである事を理想とする」人が85%もいる一方で、「近所で支え合える人の数が4人以上」という人は僅か6%しかいません。正直、私自身も4人もいません。

―ギャップのあるところにニーズが生まれると。

住民本人だけでなく、町内会加入率低下や税収減等による市民自治の強化や行政のDXといった重要な課題もあります。

また、地域の商店へ目を向けても、コロナ禍で地域コミュニティとの接点がオンラインになったり、インバウンドが消滅したことで足下の商圏が大事になったりといった大きな流れがあるなか、これまで広告媒体の中心であったチラシに次ぐ効果的な広報が求められています。

―事業としての勝算は?

米国ではNextdoor(ネクストドア)という、ユーザー登録数が6,000万人、3分の1の世帯が使っている地域SNS運営会社があります。ここは直近の決算で2億ドル(約274億円)くらいを売り上げています。バリュエーション(企業評価価値)も、今は株価が下がってきているので20億ドル(約2.740億円)くらいですが、去年の上場当時は40億ドル(約5,480億円)ンくらいの規模感で資本市場から見られていました。

また、同社の直近の四半期の売上を、ウィークリーアクティブユーザーで割ったARPU(ユーザー1人あたりの売上金額)は181円ですが、当社のARPUは1,479円あります。

折込・DM・交通広告やフリーペーパーなどを合算すると、国内におけるローカル広告市場は9,000億くらいの規模です。ここは、まだまだDXの余地が大きくある領域で、非常にビジネスの可能性があります。

―収益化はどのように?

機能特化した「スポンサーアカウント」を販売しています。月額3万円にプラスでオプションプランという形です。

一言でいうと、足下商圏のデジタル顧客基盤を取っていくものです。コロナの影響で売り上げが1日1万円になってしまった日本橋の老舗のお寿司屋さんがピアッザでテイクアウト情報を配信したところ、近所のファミリー層が訪れて40〜50万円へ跳ね上がった例もあります。

お寿司屋さんのような方たちがピアッザを使うようになったのは大きなシフトだと思います。ほかにも、不動産や美容、習い事のセクターや、商業施設も大きなお客様です。

―エリア展開は?

東京・神奈川・名古屋・大阪を中心に80のエリアで展開し、次の1〜2年で200エリアを目指しています。東京の中央区では30、40代の人口の30%が登録しており、先月は「教えて」の投稿の返信率が95%、期間中ユーザーあたりの滞在時間も1.7倍になりました。ユーザーが増えつつ、エンゲージメントも高いコミュニティになってきています。

―外部との連携状況はいかがでしょうか。

約50の自治体と連携しており、保育園や幼稚園にも普及しています。行政の地域 SNS は運営が難しいですが、ピアッザなら管理を任せられるほか、広報をデジタル化できます。
Twitter・Facebook・LINE を使うと区役所、児童館、幼稚園といった大きな単位でのアカウントによるマスの情報になりがちです。ピアッザならもっと細かい情報をローカルへ届けられます。

また、「イベントに何人が集まった」といったスポット的な情報だけでなく、時系列や他の街との相対比較ができ、コミュニティの施策を定量評価できると同時に、施策の優位性も測れます。

―事業者との連携は?

鉄道事業者や不動産事業者の皆さまとご一緒したり、「コミュニティデザイナー」という地域の方を採用したりしています。日本橋では三井不動産さま、勝どきでは東京建物さまと、人が集まる場所や子どもたちが遊べるスペースを一緒に作っています。こういう施設を今後増やしていく予定です。

―順調に連携が進んでいる要因は何でしょうか。

1つは、定量指標としてユーザーグラフデータを作り、コミュニティを可視化していることです。ただし、「コミュニティファースト」を大事なバリューとしており、コミュニケーションして初めて価値が生まれると考えているため、ユーザー数は要素として含めていません。

絶対数値をユーザー数で割り戻したマルチプルのような形でコミュニティバリューを出しています。ユーザー数が大きくなると平均が下がってきますが、「これくらいの規模感のときの平均のマルチプルってこれくらいだよね」という正常値を把握しています 。

一般ユーザーはこういった指標の開示はしておりませんが、今後は公開していきたいと考えています。つながりの数やコミュニケーションの程度を集積したものがコミュニティバリューであり、それはユーザーのものでもあります。

―コミュニティバリューが高まると地価の上昇も期待できるかもしれません。最後に、今後のビジョンを教えてください。

出所:PIAZZA株式会社

今後のサービスインフラとなる街の”スーパーアプリ”を作りたいです。アプリのAPI自体を公開し、決済としてポイントシステムを入れ、アプリから家事代行やカーシェアを発注できる仕組みのベータ版を始めています。このプロジェクトも三井不動産さまと提携しています。チラシ中心のローカル広告市場に加え、ローカルのeコマース市場まで含めると2.7兆円程度のマーケットになります。ここに対してアプローチできるプラットフォームになっていければと考えています。

これからの街の価値はハードからソフトになっていきます。どんどん人口は減り、対話はリモートで、家にいれば宅配で何でも届く。住む場所を考えたとき、ハードだけではないソフト部分の価値観で高めていかなくてはならないのが今後の街づくりの特徴です。街のソフト開発を担う、「次世代の街づくりカンパニー」、これをピアッザの大きなビジョンとして掲げています。

※1…出所:内閣府「国民生活選好度調査」、三菱総合研究所「社会保障に関するアンケート調査」

社名:PIAZZA株式会社
創立:2015年5月
従業員数:20名
主な事業内容:デジタルコミュティアプリの企画・運営、エリアマネージメント、ローカルマーケティング支援、ローカルビジネス支援
URL:https://www.about.piazza-life.com

本稿は、ICF会員として、社会課題解決のために共に活動するベンチャー企業を紹介するシリーズ記事です。

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