#2 MRI Activities
株式会社三菱総合研究所 事業基盤部門統括室 未来共創グループ 八巻 心太郎
三菱総研では、これまで社会課題解決を目標に取り組んでまいりました。
あるべき未来の想定に基づいて社会課題を設定し、それを研究・提言し、政策や事業立案につなげる。そして、事業設計・実証を経て社会に実装する。これが、社会課題解決のバリューチェーンであると考えます。
この一連の取り組みを行う中、スタートアップや企業の皆さんなど、さまざまな方と連携、共創してまいりました。
本セッションでは、それらの取り組みについて、2パターン6事例を取り上げます。
1つ目のパターンは、三菱総研がスタートアップと共に直接ビジネスを構築しているもの(4番目の事例まで)。2つ目のパターンは、三菱総研がエコシステム構築を支援し、間接的にスタートアップ支援をしているもの(5、6番目の事例)についてご紹介します。
ヘルスケアスタートアップ(ヘルスビット社、ノビアス社等)との共創
PHR(パーソナルヘルスケアレコード)を活用し企業の健康経営をサポート
ヘルスビット株式会社 代表取締役社長CEO 部坂 英夫 氏
株式会社ノビアス 代表取締役社長 井上 史之 氏
株式会社三菱総合研究所 ヘルスケアVCP 榎本 亮
榎本:日本の医療・介護費は、高齢化の進行により2050年には100兆円を超える見込みです。支える世代が減る中、公的保険の見直しは不可避であり、民間の予防医療サービスの拡大が期待されています。
この分野はスタートアップが多いため、限られたリソースを共有し、シナジーを最大化する必要があります。また、企業の健康経営への取り組みに対応したサービスの多様化が求められています。
スタートアップ単体のサービスでは効果的な施策を打ちにくいため、我々はバイタル情報などを計測するサービスと、その状態を改善させるサービスをパッケージ化し、人的資本経営を支援するための準備を進めています。
部坂:ヘルスビットでは、従来の体重中心の健康指標ではなく、体力を重視した健康指標を開発しています。
パーソナルスコアは、身長、体重、腹囲から身体年齢を算出。フィジカルスコアは、握力、片足立ち、前屈から生活習慣病リスクを把握します。
ある企業では、パーソナルスコアを活用し、実年齢より身体年齢が若い場合、1歳につき1000円、会社が確定拠出型年金を増額しています。この取り組みによって糖尿病やうつ病が減り、生産性の向上、離職率の低下など、健康経営に役立っています。
井上:ノビアスでは、数本の髪の毛から直近のミネラル摂取量を評価するヘルスケアサービスを提供しています。従来は100本以上の髪の毛が必要でしたが、独自の技術により、1本から数本で評価可能にしました。現在は女性向けに「Mine」を販売しており、髪の毛を郵送いただくことで測定でき、スマホで結果を確認できます。
ノビアスの目標は、テクノロジーを活用して健康寿命を10年以上延ばすことです。簡便な栄養評価サービスを通じて、その実現を目指しています。
New Ordinaryとの共創:移動の促進によるウェルビーイング向上
株式会社New Ordinary 代表取締役CEO 作井 孝至 氏
株式会社三菱総合研究所 コーポレートベンチャリング本部 小泉 洋平
小泉:我々の共創事例では、車中心の交通システムの弊害や人口減少に伴うインフラ維持、そして、ライフスタイルが多様化する中で個人のウェルビーイングをいかに追求するか、この2つの課題について取り組んでいます。
AIがユーザーの好みに合った行き先をレコメンドし、移動を促進させる。これによってユーザーの満足度を向上させ個人のウェルビーイングを高めると同時に、交通需要を増やし、持続可能な交通システムを実現しようとしています。
作井:New Ordinaryは、AIの自然言語処理とディープラーニングによるパーソナライズ技術を強みとしています。
この技術を名古屋市の観光デジタルマップへの本格導入し、AIレコメンドにより観光スポットや飲食店、モデルコースを提案しています。インバウンドにも対応し、65の多言語機能を導入済。
また、東武鉄道様との実証実験では、ユーザーの訪問先が40%以上増加し、これに伴いウェルビーイングが平均10%向上する成果が得られています。
小泉:現在、TXJ(Tourism Exchange Japan)様、南海電鉄様との共創活動も実施中。今後は、AIレコメンドの結果とここから得られるユーザーデータを活用してサービスやコンテンツを開発・改善し、観光分野での実績を積みながら、AIレコメンド技術が活用できる他の分野へもサービスを広げていこうと考えています。
New Space Intelligenceとの共創
宇宙からインテリジェンスを生み出し社会課題を解決する
株式会社New Space Intelligence 代表取締役社長, CEO 長井 裕美子 氏
株式会社三菱総合研究所 先進技術・セキュリティ事業本部 武藤 正紀
武藤:宇宙からの人工衛星データを活用してインテリジェンスを生み出し、社会課題を解決する取り組みについて、ご紹介します。
地球を周回する数千基の人工衛星のうち、数百基が地球を観測しています。これらのデータは、気候変動や災害、軍事情勢などを捉える重要な情報源となっているのです。
また、行政の人手不足解決のために、ドローンと組み合わせてインフラモニタリングにも活用されています。
現在、民間を含め多くの人工衛星が大量のデータを収集しており、これらを効率的に処理・活用することが大きな課題です。MRIの持つ各種地理空間情報・統計データを組み合わせた情報と、NSIの持つ大量の衛星データを短時間で処理し、利用できる形にする技術を組み合わせ、社会課題解決を図ります。
長井:NSIは2021年に大学の研究室から発足しました。災害時の国際的な枠組み「緊急観測」で衛星データを解析してきた経験から、独自の衛星データ校正技術を開発。さまざまな衛星データを同じ指標で比較できるようにし、最適な複数の衛星データを選択・統合して課題に合わせた解析を自動化する「衛星データパイプライン」システムを構築しました。
現在このシステムを使ってさまざまなサービスを開発しており、今後打ち上げられる新しい衛星データにも対応可能な拡張性のあるシステムとなっています。
NSIは独自の衛星データ処理技術を活かし、大量の衛星データから最適な情報を自動的に生成するシステムの提供を通じて、災害対応などの社会課題の解決に貢献することを目指しています。
JR西日本コミュニケーションズ、NTTドコモとの共創
触覚VRを活用した体験型メディアへの共創活動
株式会社JR西日本コミュニケーションズ 次世代事業開発室 秋友 宏紀 氏
株式会社NTTドコモ 6Gネットワークイノベーション部 石川 博規 氏
株式会社三菱総合研究所 コーポレートベンチャリング本部 藤馬 裕一
株式会社三菱総合研究所 ビジネスコンサルティング本部 粕田 直希
藤馬:私たちの共創では、従来のメディアである動画やポスターに触覚VRを組み合わせることで、新しいコミュニケーションの形を探究しています。
今回、JR西日本コミュニケーションズ様が触覚VRイベントの企画・運営、NTTドコモ様が技術提供、MRIが消費者への影響の効果検証を行う形で3社が協力し、この共創に取り組んでいます。また、技術提供として慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科のEmbodied Media Projectと、NTT社会情報研究所にご協力をいただいており、更に効果検証後の触覚VRの市場創出に向けて、ICF会員のスタートアップ数社の協力をいただきます。
秋友:JR西日本コミュニケーションズでは、触覚VRを体験型メディア広告として活用し、観光地訪問への態度変容効果などを比較検証する実証実験を準備中です。
この実証実験を踏まえ、自治体や企業などと連携し、触覚VRを活用した観光プロモーションや特産品の購買促進、新しい体験価値の提供によるプロモーション支援の可能性を探っていきたいと考えています。
石川:NTTドコモでは、「フィールテック」という新しいコミュニケーション技術を開発しています。
2030年の6Gユースケースの一つとして構想され、現在は人の動作、触覚、味覚、嗅覚の伝達を実現する段階に至っています。東京大学、慶應義塾大学、明治大学、名古屋工業大学と協力しながら技術開発を進めてきました。
「フィールテック」が新しい体験価値の提供や社会課題の解決に貢献できることを期待しています。
粕田:実証実験では、購入率向上などのマーケティング効果があるか、回答者属性やサービス内容によって効果が変わるか、といった触覚VRの経済的価値を検証していきます。
また、触覚VRの強みとして、単に触れられるようになるだけでなく、出力の調整により共感を高められる点なども期待されています。
近日中に実証実験の詳細を発表する予定です(※)。
※2024/3/22にプレスリリースを発出しました 詳しくはこちらから
https://www.mri.co.jp/news/press/20240322.html
- MRI Activities動画(前半)
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(株)三菱総合研究所 未来共創イニシアティブ MRI DEMO DAY 2024事務局 担当:八巻・加藤
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